表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君へのラブレター(仮)  作者: 時雨
恋の芽
10/17


 彼の隣に肩を並べて家路を歩いている。また、今日も特に約束したわけじゃないけど、私から目配せをして彼を誘った。聞きたいことはもう決まっているのに、いざ彼に聞こうとすると怖くなってしまう。だけど、今日はそれを聞くために、周りの目をしのんで一緒に帰っているのだ。


「あのさ……」

「俺、中村さんをデートに誘った。」

「えっ」


拍子抜けして声が裏返る。今まさに聞こうとしたことを、彼から話し始めた。彼はエスパーなのか?なぜわかったんだろう……。なぜそんな話を自分から打ち明けるのだろう。彼はきっと私の気持ちを知っているのに。


「いや、言っておこうかなと思ってさ」

「実は奈江から相談受けていたんだ。」

「まじかよー、すぐ話しちゃうんだな。」

「女ってそういう生き物だからね。」


デートの誘いを受けるか断るかは、奈江が最終的に決めなと強く言い残したので、私はまだ奈江が本当にどう返事したのかは知らない。奈江がデートの誘いをOKしたところで、私は彼女を否定する権利もない。だって彼女は私の気持ちを露知らずなのだから。


「で、どうだったの?」

「断られたよ」

「えっ、そうなんだ……。」


奈江が断ったとわかった途端、正直ほっとしてしまった。だけど、彼の切なそうな顔を見ると、私も胸がきゅーっと締め付けられる。彼は今私のことなんてきっと全く眼中になくて、ただ奈江に断られたショックに浸っているだけなのだろう。そう思うと、何もできない私がとてもちっぽけで無力な存在だと感じた。喜びたいはずなのに、こんな落ち込んでいる彼を目の前にしたら、私まで悲しくなってしまう。だけど、相手が振り向く確率がまったくないのなら、潔くあきらめることも人生の中では大事なことだと、失恋ばかりしてきた私は誰よりも強く言える。だけど今そんなこと言うと私はずるい女になりそうだから、何も言わずに、ただ彼の隣にいてあげようと思った。


「今は私が隣にいてあげる」

「……おう」


だけど、彼も私の気持ちを知っていながら、そんな顔を見せるのなら、彼も罪な男だ。


私は誰よりも、あんたのことが好きなんだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ