表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界自衛隊活動記  作者: YF-23
9/12

9

 


 PKF中東地域派遣艦隊及びジブチ駐留部隊がこの世界に核攻撃による爆発により転移してから丁度1ヶ月が経った。

 どうやらこの世界も60秒で1分、60分で1時間、24時間で1日だった。

 だがここからが地球と違っており10日で1週間、3週間で1ヶ月、12ヶ月で1年であった。

 そして週の最初の1日と5日目が休日となっており、土日休みに慣れている日本人からすれば色々と狂う世界であった。

 そして自衛隊が駐留している半島は隊員達の投票の結果、暁半島と名付けられる事となり基地も自衛隊暁基地となった。

 1ヶ月が経ち、全隊員の庁舎が完成し、水深も問題無かった事から同時に2隻が接岸できる埠頭が完成し、ようやくRoRo船4隻から装備などが上陸された。

 RoRo船に搭載されている装備は戦車や重機などの重量物ばかりであり、LCACなどの揚陸艇も使えない為、埠頭の完成は悲願であった。

 そしてRoRo船から上陸した装備の中に速やかに射撃可能態勢となった装備があった。

 それが03式中距離地対空誘導弾と11式近距離地対空誘導弾であった。

 実はこの5日前に暁半島に群れから追い出された逸れ龍が襲ってきたのである。

 その逸れ龍は超高温のブレスを吐き、危うく死傷者が出る所だったが、航空基地から発進したF-15JX戦闘機の発射したAAM-5(04式近距離空対空誘導弾)や87式自走対空機関砲などによりなんとか撃墜したので、その為一刻も早い防空体制の構築が必要だったのである。

 ちなみに他の地域では逸れ龍は同じ龍には近寄らない為、殆ど被害が無いのだが、偶に飛龍隊などが居ない村などを襲って村を壊滅させる出来事が度々起きている。

 そして半島の付け根辺りに構築中だった防衛壁が完成し、常時150名態勢で侵入してくる魔物を監視・迎撃している。

 ちなみに防衛壁より基地側の森林地帯は陸自隊員が19式小銃や5.56mmMINIMI機関銃を持って討伐し、5.56mm弾では討伐不可能だった大型魔獣などはAH-64Eの30mmチェーンガンや24式装甲戦闘車の40mmテレスコープ機関砲などにより蜂の巣となった。

 その際に採取した魔石は王国経由でギルドに売却したが、その金額は2億6000万エル(1エル約10円な為、日本円で26億円)にもなった。

 その他にも自衛隊は必要ない装飾品(中東での部族などに渡す献上品もとい土産品)などを売却し、莫大な金額を得ているのだが、現状食料や隊員の給料(日本での給料をこの世界の物価価値に換算した額)しか使い道が無い為、かなり余っている。

 そして、自衛隊が順調にこの世界に馴染んでいた頃、スフィア王国の王都ムーンファルーナにあるスフィア王国中枢のスフィア城の一室では各大臣や女王が集まり定例会議を開いていた。


「では、帝国の後継者争いに関しては我が国は諸外国と同様に中立を宣言する事で。」


「異議なし。」


「同じく。」


 議題が終わると、次の議題に移った。

 それは1ヶ月前に現れ王国の東端の半島に駐留している自衛隊に関する事であった。


「では、続いて1ヶ月前に現れ現在は半島の東にある半島にいるジエイタイに関してです。彼等は半島をアカツキ半島と名付け基地を建設して半島内の魔獣を討伐。我々政府経由でギルドに売却して約2億6000万エルを得ています。更に彼等が売却してきた美術品は我々のみならず他国の貴族でも高い人気を誇っており、王都の商会を通じて食料などを購入しています。更に5日前そのアカツキ半島を逸れ龍が襲い彼等がその龍を討伐、8000万エルを得ています。」


 自衛隊が売却した美術品などは非常に高い人気を誇っており貴族や王族などがこぞって購入しているのである。

 更に鉛筆やノートが日本円で数十万円で売れる為、自衛隊は今非常に資金に余裕があるのである。


「・・・クラーケンを倒す奴らだからなぁ。龍も倒せたのだろう。どのくらい死傷者が出たのかは知らないが、我々としても有り難いね。」


 龍、ドラゴンはスフィア王国軍やギルド所属の冒険者などが多大な犠牲を払って討伐する魔物である。

 討伐出来た時のメリットは大きいが数十人、下手すると数百人単位が死傷する強敵であった。


「アカツキ半島と名付けたという事は扶桑連邦国と同じような民族性のようですね。」


 扶桑連邦国はスフィア王国がある半島の南側にある30万㎢程ある台湾みたいな形をした島の国である。

 スフィア王国とは友好国であり、扶桑人はその国独自の文化を持つ民族であった。


「軍務大臣はどう思われますか?」


「・・・彼等がそのドラゴンを討伐した時、買い取ってくれないか?と要請があってな、王都の飛龍基地まで持ってきてくれないか?と頼んだらあのへりこぷたーとかいう乗り物で吊り下げて持ってきたよ。彼等の技術力は底知れないな。」


 それは他のヘリコプターでは重すぎる為、JV-22輸送ヘリコプターでようやく吊り下げ400km離れた王都ムーンファルーナまで輸送して来たのである。

 最もそれを見た人達からドラゴンが現れたとの報告が相次いだが、自衛隊は知らない。


「ドラゴンって確か数十t程の重さがあったと思いますが、あの最初にやってきた乗り物ですか?」


「いや、アレとは違う回転する羽が2つある大型の物だった。その乗り物を見た時思ったよ。彼等は別次元の軍隊だとね。」


 他にもローターが2つあるヘリコプターでCH-47JA輸送ヘリコプターがあるが、彼等はCH-47JAならヘリコプターは見ていない。

 もし見たらその装備の多彩さに驚くであろうが。


「軍務大臣、本当にそうでしょうか?」


 そう言って来たのは外務大臣のルノーネ大臣である。彼女は非常に優秀な外交官として帝国やその他国家に知られている人物であった。

 冷静に物事を見極める事ができ、外交下手の日本に是非欲しい人材でもあった。


「外務大臣、どういう事だね?」


「確かにジエイタイの技術力が凄いのは認めなければならない事です。彼等の24隻の艦隊を人魚族に見て来て貰いましたが、確かに武装は100mm程の巨大な大砲が搭載されていました。しかし武装はその大砲1門のみ。船の大きさに対して武装が貧弱でした。彼等は軍隊では無く我が国で言う海洋警ら隊なのでは?」


 海洋警ら隊は日本で言う海上保安庁、諸外国の海洋警察や沿岸警備隊などの海の治安維持組織である。

 この文明レベルでは珍しくスフィア王国は警察機構が存在するのである。

 最もその規模は近代国家にも劣るレベルだが、都市の治安維持という意味では十分にその役割を果たしていた。

 ちなみに人魚族が艦隊を監視している事は各艦艇に搭載されているソナーにより艦隊側にはお見通しであった。

  中にはファンタジーな人魚で興奮している乗員も居たが、全員上官にしこたま怒られていた。


「確かに、それ程大きな船に武装が大砲1門だけとはな・・・・」


 当然ながらこの世界にミサイルなどという武器は無く、VLSや対艦誘導弾発射筒などもよく分からない物、として処理されている為、彼等が分かる武装が速射砲とCIWSやSeaRAM(CIWSに似ているから武装だろう、という認識)くらいなのである。


「更に、彼等は嘘をついているわ。」


「嘘?」


「彼等は24隻の艦隊と言った。だけど人魚族の報告には21隻しか無かった。付近の海域も見て来てもらったけど発見出来なかったわ。艦艇数を水増しする人達など私としては彼等は余り信用出来る人達では無いと思います。」


 この時、艦隊の3隻の潜水艦が潜航状態だった為、潜水艦という概念がない彼等は分からなかったのである。

 ちなみに2隻は艦隊付近で潜航していたが、1隻は使節団に何かあった場合に備え王都ムーンファルーナ沖で警戒にあたっていた。

 この時上空6000m地点でアヴェンジャー無人攻撃機2機が警戒飛行していたが、レーダーが無いスフィア王国は全く気が付かなかった。


「待ってくれ!経った3隻を水増しする必要性が感じられない。艦艇数を1.5倍や2倍に水増しするなら話はともかく21隻がら24隻に増やしたところでメリットがない。」


 そう言ったのは技術大臣であった。彼は自衛隊の銃(MP7A1)や乗り物(UH-2J、OH-1)などを見て自衛隊もとい彼らの所属国である日本は非常に高い技術力を保有していると考えていた。

 そんな技術力を持った彼等がわざわざ経った3隻を水増しするとは考えられなかったのである。


「という事は彼等が把握出来ていなかったという事か?」

「どちらにせよ経った24隻しか無い艦艇を把握出来ない者を信用する訳にはいきません。」


「とりあえず話を続けよう。24隻だろうが21隻だろうが、何か変えることは無い。だが、大砲が1門しか無いのならジエイタイは軍隊というより海洋警務隊などの治安維持機関の可能性が高いな。」


 彼等の海軍船は地球で言う戦列艦や装甲艦であり大砲が当たらない為沢山の大砲を搭載するのである。

 しかしFCSと呼ばれるコンピュータにより未来位置を予測してそこに正確に砲弾を発射出来る127mm砲や5インチ砲などの現代砲塔では問題無く命中する為、1門で問題無いのである(レールガンを搭載している【ながと】以外の艦艇では砲は副武装だが)。


「今はこの際ジエイタイが軍隊か治安維持機関など今はどうでも良い事では?」


「技術大臣、どういう事だ?」


「ジエイタイが軍隊にしろ治安維持機関にしろ、我々の軍隊が討伐出来ないクラーケンを倒し、ドラゴンを倒しているという事に変わりはない。実績が無いのなら話はともかく実績があるんですよ?冗談ですが、もしかしたらその大砲が高性能で百発百中かもしれない。少なくとも彼等は我々の軍隊より強い。」


 そう、この会議の参加者がどれだけ反対しようが、自衛隊はスフィア王国軍やギルドが討伐出来なかったクラーケンを討伐し、逸れ龍を撃墜しているという実績があるのだ。つまりそれだけの力を持っているという事である。


「まぁ、海の上は揺れるから全弾命中は有り得ないとして、確かに彼等には実績がある。更に彼等の船は全てが鉄で出来ている。彼等の国はこの世界には無いが、恐ろしい国だな。」


「・・・全く、なんで精霊様はあんな奴らを問題無いと言うのか、」


『実力があるからよ。』


 ルノーネ大臣がそう言った時、突如彼女の後ろから声がして皆の視線が集まった。

 この会議室は非常に植物が多く外のような印象を受けるが、部屋の中であり、1ヶ所しか無い扉の外には衛兵が警護にあたっていた。

 そしてルノーネ大臣の後ろにいた人物を見て彼女は驚愕した。


「!?し、し、シルフィ様!?」


 風の大精霊シルフィ。

 自然の具現化した存在とも言われている精霊の中、各属性で最も格が高いのが大精霊である。

 精霊界と呼ばれるこの世界のすぐ隣にあると言われている世界に住み、女神の使徒とも呼ばれている。

 人前に姿を表す事は殆ど無く、この大陸で最も信者数が多い宗教では崇められている存在でもある。


『久し振りね、ティリファ。』


「お久しぶりです、シルフィ様。しかし何故風の大精霊の貴方様が。」


 ティリファ女王がそう聞くとシルフィと呼ばれた精霊はコクっと首を傾げ、悩むようにして言った。


『う〜ん、今説明しておかないとギクシャクした関係になりそうだったからかな。どうやらこの中で彼等の実力を知っている人は皆無だしね。』


「彼等とはジエイタイの事ですか?」


 自衛隊はこの世界とは別の世界から突如現れたと聞いた為、精霊なら何か知ってるのでは?と考えた。


『えぇ、そうよ。彼等がこの世界に飛ばされたのは神の意志なのよ。だから貴方達とギクシャクしたままだと問題があるのよねぇ。』


「か、神の意志ですか・・・」


 そこまで聞いて自衛隊がこの世界に来た事は神が関与している事だと初めて知った。

 つまり彼等自衛隊は神が関与する程影響力がある人達だと言う表れでもあった。


『まぁ、神の意志は置いておいて。彼等の実力について簡単に説明するわ。まず彼等が所属していた日本という国は人口が約1億2000万人程の立憲君主制の大国よ。』


「お、億ですか。」


 それを聞いて自衛隊の所属国である日本がどれ程の国なのか大まかに理解した。

 人口1億2000万人もいる国が小国の訳が無かった。

 スフィア王国の人口は戸籍など無い為、正確には把握していないが約1500万人程で、帝国は7000万人程。

 全てにおいて対立関係にある皇国も1億人もの人口を誇る。

 つまり日本は少なくとも帝国や皇国レベルの化け物国家という訳だと考えた。


『ふふふ、まぁ、それで彼等自衛隊はこの世界で言う軍隊なのは間違い無いわ。ちゃんと日本には海上保安庁と呼ばれる貴方方の海洋警務隊に相当する組織があるわ。それで、自衛隊の実力だけど、貴方が21隻しか居ないって言ってたけどね、ちゃんと24隻で合ってるわよ。』


「し、しかし実際に21隻しか、」


 シルフィの言葉にルノーネ大臣が反論した。

 まさか人魚族の報告が間違っているとは到底思え無かった。

 しかしシルフィはそんなルノーネ大臣の言葉とは裏腹に淡々と事実を述べた。


『彼等の艦隊24隻のうち3隻は潜水艦と呼ばれている海に潜る船なの。多分人魚族はその潜水艦を岩や魚かなんかと勘違いしたのよ。』


「海に潜る船?そんな船がこの世にあったなんて。」


 彼等の技術力は基本は1700年代であり、魔法で強化しても1800年代程である。

 潜水艦みたいな海に潜る船など想像もしていなかった。

 そしてこの世界の海軍には海に潜る船を攻撃する術は無い。

 逆にそんな船を作るなら当然、船を攻撃出来る術は用意しているだろう。

 つまりこちらからは何も手出し出来る事無く、一方的に狩られる事を示していた。


『まぁ、それで彼等の実力だけど、帝国が全戦力で攻めて来ても勝てるだけの実力とだけ言っておくわ。』


「彼等はジエイタイは信用出来るんですか?」


『彼等は貴方達が敵対行動を取らない限り敵対する事は無い。少なくとも私達精霊は信用しているわよ。彼等を受け入れた貴方の判断は間違っていないわ。それじゃあね。』


 そう言うとシルフィは部屋から消えていった。

 その後自衛隊の今後に関する事が話されたが、自衛隊に否定的な出席者はいなくなっていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ