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異世界自衛隊活動記  作者: YF-23
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【おおすみ型】輸送艦3番艦、LST-4003【くにさき】。海上自衛隊の艦艇として初めて全通甲板を採用し建造当初は空母と言われたが戦闘機などの離発艦は不可能であり、空母というより揚陸艦としての要素が強い艦艇である。揚陸艦艇であるLCACを2隻搭載しており、完全武装の陸上自衛隊隊員330名を揚陸する事が可能である。

 今回はヘリ甲板に露天係留で輸送ヘリコプターであるCH-47JAを2機搭載しているが、今は邪魔な為、艦前部の空いているスペースに移動されている。そんな広くなった後部甲板に2つあるヘリパッドでは2機のヘリコプターがローターを回転させ飛び立とうとしていた。

 海上自衛隊のヘリコプターのようにグレーや海洋迷彩の塗装でも無い陸上迷彩のその機体は陸上自衛隊UH-2J多用途ヘリコプターとOH-1観測ヘリコプターである。UH-2JはUH-1Jの後継としてSUBARUとベル.ヘリコプターが共同開発した陸上自衛隊の新型多用途ヘリコプターで調達開始から8年が経った現在も毎年10機弱ずつ調達している。

 OH-1観測ヘリコプターはOH-6観測ヘリコプターの後継として国産開発されたヘリコプターである。敵の攻撃から逃れる為、宙返りも可能な程の高機動なヘリコプターであり、自衛として91式対空誘導弾を左右のランチャーに各2基の計4基搭載しており、今回はUH-2Jの護衛として随伴する。

 そのようなヘリコプターが2機発艦しようとしていた。定員12名のUH-2Jの中には、交渉担当の幹部自衛官2名と6名の護衛の陸上自衛隊員、パイロット2名の計10名が搭乗している。OH-1はパイロット2名の為、今回は12名が向かう事になっている。


「では笹浦二等陸佐、外交官が居ない我々にとって今は貴方が外交官です。どのような国かは不明ですが、よろしくお願いします!」


「分かりました。良い返事を貰ってきます!」


 ヘリコプターのローター音により大声での会話となるが、彼笹浦二等陸佐は湾の半島側に位置するスフィナ王国という国と外交交渉の担当を任されたのである。と言っても言葉が通じるかも分からなく、いきなり護衛艦で行くのも憚られた為、領空侵犯覚悟でヘリコプターで行く事になったのである。


「笹浦二等陸佐、搭乗を!」


「助かる!」


 UH-2Jの最後の点検をしていた整備士から搭乗するように言われ彼は整備士の手を借りながらUH-2J内に搭乗した。笹浦二等陸佐は現場の人間では無く防衛省の制服組であり、今回の派遣前にはイギリスの駐英防衛駐在官であった為、今回抜擢されたのである。

 そして全員が搭乗するとドアが閉められ、整備士達もヘリを固定していた留め具を外しヘリから離れていく、そしてローターの回転数が上がりふわりと2機のヘリコプターが【かが】から浮かびそのまま海の彼方へと消えていった。

 艦隊が核爆発に巻き込まれてから37時間後、ようやくPKF中東地域派遣艦隊はこの世界での生き方を模索していた。





 その頃スフィア王国の王都ムーンファルーナでは王都防衛隊の龍騎士ファルナが相棒のワイバーンに跨って警戒飛行に出ようとしていた。すると建物から同じ竜騎士の格好をして来た少女が出てきた。


「ファルナ!クラーケン見つけたら討伐して来なさいよ!」


「ちょっ!クスナ、クラーケンなんて簡単に討伐出来るもんじゃ無いよ。」


「でもさぁ、アイツらのせいで帝国との交易が止まっちゃってるしさ。かと言って陸路はねぇ〜」


 帝国とはスフィア王国の対岸にあるフローネシア帝国の事である。国同士の仲は良く、スフィア王国はフローネシア帝国から魔道具や加工品、フローネシア帝国はスフィア王国から薬草などを輸入する共存関係が成り立っていた。

 王国と帝国は一応は国境を接している隣国だが、その国境いわゆる半島の根元には数千m級の山脈がそびえ立ち陸路で行くには険し過ぎる道だった。その為海洋貿易で交易を行って来たのだが、この海で最近になりクラーケンと言う海の魔物が現れ次々と船を沈めていく為、交易で栄えたムーンファルーナは活気が無くなっていた。


「・・・・とりあえず警戒飛行に行ってくるわ。」


「ちょっ!私の話を聞きなさいよ〜!!」

 

 ファルナは親友のクスナの話を聞いてたらいつになっても任務にあたれないと思い、親友の言葉を無視してワイバーン用の滑走路から空へと飛び立っていった。

 ワイバーンは単独なら鳥みたいに垂直に飛べるが人などを載せていたらそれなりに助走を付けないと飛べないのである。その為王都防衛隊の基地には1km程の滑走路が作られている為、基地はかなり広かった。

 王都は通称水の都と呼ばれ海と湖の間に造られた美しい都市である。縦10km、横30km程の場所に沢山の建物が建てられ、奥の湖にある中洲に王城は建てられている。


「美しい街だね。」


 ファルナは自分の相棒のワイバーンに語りかけるように言った。するとワイバーンはファルナの問いに答えるようにキューイ!!と鳴いた。実際実際に警戒飛行と言っても何かあった場合に備えて数綺のワイバーンが警戒に当たるだけなので、決まった時間飛んでいるだけなのである。そして今回もファルナは王都の美しい景色を見て終わりだろうと思っていた。


『こちら王都防空隊!海の方から正体不明の物体が2つ接近してくる。総員警戒に当たれ!!』


 緊迫した声が腰に掛けている魔導通信機から聞こえてきた。魔導通信機は発信者の魔力を使い声を遠くに飛ばす魔道具であり、かなり高価だが竜騎士には全員分が配備されている。


「正体不明の物体?・・・行くしかないか。」


 ファルナは最初なんの事か分からなかった。空を飛んでくるなら龍や鳥などでありそう言うのだが、正体不明という事はそれすらも分からないという事か?何にしても自分の担当時間なら向かわない訳には行かず、ファルナは相棒のワイバーンを海の方へと向けた。





「前方に巨大な物体を探知!!」


 UH-2Jのパイロットがレーダーに映った軽飛行機サイズの物体を察知した。ヘリコプターに搭載されているレーダーはそれ程強力なレーダーでは無く、せいぜい気休め程度である。後方にいるイージス艦のレーダーなら数百kmは探知できたであろうが。


「・・・あれってドラゴンだよな!?ひ、人が乗ってるぞ!」


 いよいよ目視出来る距離まで接近したその物体を見てようやくその正体が分かった。隊員の1人がそう叫んだ為、他の隊員も窓の外にいる大きいワイバーンに乗った人を見た。


「4騎はいるな。まさかこの世界に領空の概念が有ったとは。」


「笹浦陸佐!どう致しますか?」


 ヘリのパイロットがこの場の最高指揮官でもある笹浦二等陸佐に質問する。彼は暫く考えるとすぐさま指示を出した。


「相手の指示に従おう。護衛のヘリにも手を出さないように伝えてくれ。」


「了解しました。イロコイ01よりニンジャ01へ。こちらから手を出すな。相手の指示に従え。繰り返す・・・」


 指示に従い後方でワイバーンに91式空対空誘導弾をロックオンしたOH-1に向かって指示を出す。本来イロコイはUH-1Jの愛称だが、見た目は殆ど違わない為、UH-2Jも愛称がイロコイとなった。


『・・・こちらニンジャ01、了解。』


 暫く2機のヘリコプターは4騎のワイバーンに囲まれていたが、その内の1騎のワイバーンに乗っている人が誘導に従えと離れていった。


「・・・ついて来いって事か?」


 結果、付いていく事にした2機のヘリコプターだったが、誘導されたのは都市から少し離れた場所であった。そしてそこで見たものに驚愕していた。


「おい!あれって滑走路か?」


「1kmくらいしかないな。多分この周りのワイバーン用だろう。って事はここは軍事基地か。」


 1km程の滑走路にいくつかののっぺりとした建物、管制塔みたいな少し高い建物と、軍事基地みたいな大砲を備えた建物を見てここが軍事施設だと察するのにそう時間は掛からなかった。そして降下中のヘリコプターから下を見ると剣や槍を持った兵士達が集まってくるのが見えた。

 そしてUH-2Jと少し遅れて護衛のOH-1の2機のヘリコプターはスフィア王国の軍事基地とみられる場所に無事着陸したのである。そして着陸したUH-2Jから扉を開けて最初に降りて来たのは交渉担当の2名であり、その後に6名の護衛の陸上自衛隊隊員がMP7A1サブマシンガンを持って降りてきた。

 MP7A1はドイツが開発したサブマシンガンであり警察や特殊部隊に採用されている傑作銃である。武器が小銃では無かったのは今回はあくまで交渉しに来たのであり、小銃が必要な事態にはならないだろうと考えられていたからである。ちなみに今回の随行員全員が拳銃を携帯している。

 そして今回はそのMP7A1にダットサイトとフラッシュライトを装着して、携帯としてサプレッサーを持ってきている。こうして自衛隊はこの世界に来て初めて陸地に降り立ったのである。



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― 新着の感想 ―
[一言] ほう・・・。物資が消耗しないとな・・・?( ̄ー ̄)ニヤリ 次回を待ってます!
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