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異世界自衛隊活動記  作者: YF-23
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 西暦2027年3月、中東地域の王政の大国サウジアラビアが財政破綻し王政が崩壊、サウジアラビアは政府軍と反政府軍に分かれての内戦状態となった。

 更にそこにテロ組織などが入り込み三つ巴の争いとなった。

 こうなった原因は色々とあるが、1番は石油価格の下落により財政が悪化したことだろう。


 とりあえず今は原因は置いておいて、中東地域の大国が内戦状態となった事は世界経済にとって危機的状態であった。

 幾ら石油の需要が減ったからといえ中東地域は未だ世界最大の石油生産地帯であった。

 結果、国連の安全保障理事会で中東地域に治安維持とインフラ整備を目的としたPKF(国連平和維持軍)が派遣される事が決定した。

 すぐさまアメリカを始めとしたNATO各国やインド、ロシアが参加を表明。少し遅れてアフリカ•中東地域での勢力拡大を望む中国も派遣を決定した。


 そこで日本だったが当然大論争となった。

 が、アメリカの強い要請により与党が国家存立危機事態として過去最大規模の自衛隊部隊を派遣する事を決定し、時限立法として中東地域自衛隊派遣特措法が与党と一部の野党の賛成多数で可決され、自衛隊の派遣が決定した。

 自衛隊の派遣が正式に決定したのは良かったのだが、問題なのはその派遣する戦力(防衛力)だった。

 中東地域は未だ正規軍並みの武装勢力がたむろする地域であり、付近の空港も閉鎖又は破壊されており、数少ない無事な空港も他国軍が使用する為、日本の割り当ては非常に少なかった。


 その為、防衛省は陸上自衛隊は1個旅団規模(3600名)、海上自衛隊は3個護衛隊を主力とし航空自衛隊は3個護衛隊内の【あかぎ型】航空機搭載護衛艦にF-35JBを36機、RoRお船内に予備を6機のの計42機で決定した。

 更にそれに加え、元々ジブチには自衛隊の対潜哨戒機部隊が配備されており、それに航空戦力としてすぐさまF-15J/DJの近代化未改修機の後継として導入されたF-15Xの日本版のF-15JXが1個飛行隊分派遣された。


 当然ながら自衛隊の輸送能力はアメリカなどの国に比べたかがしれている為、【おおすみ型】輸送艦とその後継の【ぼうそう型】輸送艦2隻だけでは足りず民間から陸自車輌や工事作業車を輸送する為、RoRo船を4隻借入れる事に決定した。

 よって3個護衛隊群12隻、輸送艦3隻、補給艦2隻、潜水艦3隻、RoRo船4隻の計24隻の大艦隊となった。

 だが、このうちの2個護衛隊8隻と潜水艦3隻は輸送艦の護衛であり、艦隊が中東地域に着き次第欧州経由で日本に帰還する事になっている。

 でないと日本の国防に穴が空くことになるからだ。

 そして4月7日、横須賀•呉•佐世保の各港から出航した中東地域派遣艦隊は沖縄沖で合流した後中東地域に向かった。


「艦長、後2時間程でディエゴガルシア島沖を通過します。」


 日本を出航して13日、艦隊は友好国のマレーシアやインドで補給を受けた後インド洋を航行していた。

 今回の中東地域派遣艦隊の指揮官乗船艦であるいずも型護衛艦2番艦のDDH-184【かが】で、そしてその艦橋で今回の指揮官となったのが佐々木 誠一等海佐である。


「分かった。しかし今回は政府も本気だな。民間船含めて24隻は相当な規模だぞ。」


 過去に自衛隊の艦艇を中東地域に派遣した事はあったものの1〜2隻の海賊対処の派遣であり、更に戦闘を目的とした陸上部隊を派遣するのは今回が初であり、それだけで日本政府の本気度が伺えた。


「石油が入って来なければ日本は危機的状況に陥りますからね。十分に国家存立危機事態に該当します。ですが、既に派遣されている他国の部隊と現地武装組織との間でかなり激しい戦闘が発生している模様です。」


「みたいだな。イランの動きも気になる。第5次中東戦争にならなければ良いが・・・」


 スンニ派筆頭のサウジアラビアが混乱したならば喜ぶのはスンニ派と激しく争っているシーア派のイランである。

 今回はそのサウジアラビアの治安を回復する為の派遣とは言えこれまでサウジアラビア側に付いてきたアメリカや欧州諸国の軍隊が自国の目の前まで来るのはイランにとって相当な脅威であろう。


「・・・そうですね。」


「ところで付近に船舶は?」


 日本の中東地域派遣艦隊の半径100km圏内に民間船の侵入を禁止しており、入ってきたらSH-60Kなどの哨戒ヘリコプターやF-35JBなどの戦闘機で警告、攻撃してくるようですあれば排除する予定であった。


「現在400km圏内に民間船は確認されません。しかし、120km先には韓国海軍の第1艦隊が、後方70kmには中国海軍の北京艦隊がいます。」


「中国か・・・・。まぁ、こういう時はしのごの言ってられんからな。仮想敵国だろうが、こういう時は頼りになる。」


 日本と中国は尖閣諸島を巡って領有権争いを続けていた。

 経済上は両国ともに無くてはならない国の為、友好関係にあったが、安全保障上は互いに仮想敵国とも言える程に争っていた。

 中国は海軍力の強化に力を入れていたが、日本も海上自衛隊の強化に力を入れていた為、軍事力の均衡はなんとか保たれていた。


「そうですね。空母を始めとした空母打撃艦隊ですからね。敵ならともかく味方なら頼もしいですね。まぁ、経済侵略をしなかったらの話ですけどね。」


 中国は2017年ロシアから購入した空母を改修して練習空母【遼寧】を北海艦隊に配備した。

 その後自国産空母【北京】を2022年に東海艦隊、2番艦【上海】を2025年に南海艦隊に配備し、練習空母を除いた2つの空母を中心とした外洋艦隊として空母打撃艦隊を編成していた。

 そして今回はそのうちの1つである北京空母打撃艦隊を派遣していた。


「まぁ、その護衛だろうな。他国に対する牽制もあるんだろうが、アメリカ、イギリス、インド、中国、そして我が国か、空母が5隻もあると侵略しに来てるみたいだな。」


 2027年現在、世界でまともに正規空母を運用している国はアメリカ・フランス・イギリス・インド・中国・日本の5ヶ国であり、数年前まで空母【アドミラル・クズネツォフ】を運用していたロシアは財政難から係留状態となっている為、除外された。

 それはともかく今回、空母を運用している国全てが空母を派遣している事からこの事案の重要度が分かるだろう。


「そうですね。使える空港が無いので航空支援する為に仕方がないと言えば仕方がないのですが、5隻は多過ぎますね。イランを刺激しなければ良いのですが。」


「刺激しない訳無いだろ?全く彼等は何を考えているのやら。」


 艦長はこの後の展開にかなりの不安があった。

 その後、暫く航海は続きインド洋の要所であるディエゴガルシア島を通過した。そしてアラビア半島まで後400kmと行った時、急に艦の警報アラームが艦内に鳴り響いた。


「な、なんだ!?」


「い、イランより飛翔体が発射された模様です!!」


 CICに移動していた佐々木司令の問いにレーダー要員が叫ぶように報告した。そしてそれは恐れていた事態でもあった。


「なに!?着弾予測地点は?」


「ほ、ほほ、本艦隊です!!」


 震えながら言う担当官が言い終わった後、CIC内にいた乗員の視線は艦隊の最高指揮官である佐々木司令に移った。


「・・・・」


「・・・そ、総員戦闘配置!!対空戦闘用意。」


 5秒程の沈黙の後、佐々木司令は覚悟を決めて言った。そしてその命令を聞いた途端にそれぞれの担当官が慌ただしく動き出した。


「り、了解!総員、対空戦闘よーーい。」


 そう言い目の前のスイッチを押すと、【かが】内で赤色灯が光り、ビー!ビー!と緊急事態を告げるブザーが鳴り響いた。

 そしてその命令は他の艦にも素早く伝わり艦同士のシステムがリンクされた。


「本艦隊に向かってくる飛翔体は3発です。弾頭は不明です!」


「迎撃担当艦を【あしがら】【まや】【はぐろ】に指定!!」


 中東地域派遣艦隊には弾道ミサイル迎撃能力、BMDを持ったイージス護衛艦が3隻配備されていた。

【あたご型】護衛艦2番艦【あしがら】と【まや型】護衛艦1番艦【まや】2番艦【はぐろ】である。

 特に【まや型】護衛艦の2隻は最新のイージスシステムであるベースライン9を搭載しており、日本の中でも最強の迎撃体制であった。


「各飛翔体をα1、2、3と指定!」


「着弾予測まで残り300秒。」


 北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に着弾するまで約10分と考えると300秒、5分はかなり早かった。

 それだけイランの弾道ミサイル技術が北朝鮮より優れている証拠だが、撃たれた彼等からすればそれは最悪の事だった。


「【あしがら】【まや】【はぐろ】よりSM-3が発射されました!」


 3隻のイージス護衛艦の艦艇前部にあるVLSと呼ばれる垂直発射装置から爆音と共に全長約6.5m程の細長い物体が1発づつ飛翔していった。


「交差まで残り80秒!」


 そしてSM-3を発射して暫く後


「交差まで8・・・7・・・6・・・5・・・4、スタンバーイ、マーク、インターセプト!!」


 CIC内のディスプレイで本艦隊を目標としていた3つの赤いグリップと、その艦隊から放たれた3つの緑色のグリップがインターセプトと言った瞬間に重なった。


「どうだ!?」


「ぜ、全弾命中!!」


 そう言った瞬間に艦内では歓声が響き渡ったが、それを打ち消すような出来事が起こった。


「!?」


「どうした?」


 弾道ミサイルを監視していた要員のただならぬ様子に佐々木司令は心配するように聞いた。


「迎撃に成功しましたが、弾頭はそのまま此方に向かってきています。弾着まで15秒。」


 ごく稀に迎撃に成功した弾道ミサイルは爆発の衝撃から逃れて弾頭、もしくは破片が落ちる事があった。

 だが、その場合は弾頭は爆発する可能性は非常に低かった。

 その為、彼等が心配しているとは爆発では無く、その破片が艦艇に衝突する事である。

 現代の戦闘艦艇は装甲が殆ど無く、音速を超える速度で飛翔する金属製の破片に当たれば大きさにもよるが、タダでは済まない。

 間違い無く沈没、良くて大破だろう。

 どちにしろ死傷者は甚大だ。


「ミサイルによる迎撃は?」


「不可能です。」


 既にミサイルによる迎撃は不可能な高度まで来ていた。


「弾頭が不発の可能性が高いが近接防御システムでの迎撃を。」


 近接防御システムは本来なら航空機やミサイルに使う物であり、マッハ20ほどの弾道ミサイルの破片に使う物では無かったが、何もしないよりマシだと佐々木艦長は判断した。

 この判断の素早さが司令にまで登り詰めた理由でもあった。


「了解!!」


「CIWS及びSeaRAM起動。迎撃開始。」


 既にFCS(火器管制レーダー)に捕らえられている弾頭に向かって各艦艇の20mmCIWS(高性能機関砲)から銃弾、SeaRAMなどから小型迎撃ミサイルが発射されていく。

 航空機やミサイルを迎撃する為に開発されたCIWSやSeaRAMだったが、マッハ20もの超高速で突っ込んでくる弾頭を迎撃するのは困難を極めた。

 しかし、奇跡的にCIWSから放たれた20mm弾が1mも無い弾頭に命中した。

 しかし不発と思われ、更に核弾頭ではない事を願った乗員達の願い虚しく、核弾頭は20mm弾が命中した衝撃で爆発を起こした。

 その爆発は日本のPKF中東地域派遣艦隊24隻全てを飲み込み付近の韓国艦隊や中国艦隊には核爆発による津波や放射線による被害をもたらし、200km離れているインド洋の要所であるディエゴガルシア島は津波に飲み込まれ破棄せざるを得ない程の爆発であった。

 これにより地球は新たに大混乱に陥るのだが、それは後の話である。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?いまの核弾頭って衝撃で爆発するんですか?
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