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昼寝の夢は危ない

作者: 江川ショーコ

 私は列に並び順番を待っている。見知った顔もいる列で、私は目に見えて分かるだろうと思うくらい緊張していた。前の子が発表を終える。皆が拍手をし、私は意を決してステージへと上がっていく。




 今日は放送コンテスト本番の日だ。私は母と電話で話して緊張を紛らわせている。

 そろそろ始まる時間だと私は会場へ向かう。廊下はまばらに人が通り、人々が忙しなく動いている。私が今回エントリーしたのは『自由部門』である。普通、放送コンテストと言ったら、『朗読部門』と『アナウンス部門』、そして『その他テレビ・ラジオ関係の部門』に分かれるものだ。しかし今大会には『自由部門』と呼ばれる部門があり、その名の通り自由に自分の表現をする部門だ。今回の会場はホテルのホールを使用してるので、内装が豪華だ。そして、会場も広い。しかし、そんな会場を狭く感じさせるほどの人がそこにいる。

 発表が始まり、名前が呼ばれ、そそくさと私は発表の列に並んだ。前のこの発表が終わり、私の番になる。私は緊張と共に階段へと踏み出した。



・・・はずだった。

 私はそこで目を開く。意味が分からず時計を見れば、残酷なことに時計は10日を示していた。あの本番は9日だ。つまり、いつの間にか私は発表を終え、家に帰ってきて、寝床に入ったと言うことなのだろう・・・

は?いやいやいや。発表は?どうなったの?私の頭が疑問色に染まっているとき、台所から母が声をかけてきた。


「あんた、やっと起きたの。」


 母なら結果を知っているかもしれない。私は母に結果について尋ねた。すると、母は驚き、大きく溜め息をつき、


「最悪な結果だったじゃない。何言ってるのよ。まったく、あんたって子は。」


 最悪な結果・・・その言葉が私にドンと重く響き沈む。

 最悪というのはどういうことだろう・・・。

 何故私は何も覚えていないのだろう・・・。

そんな風に考えたとき、ある映像が強い向かい風が吹いたみたいに頭の中に流れてきた。




 階段をのぼりきり、ステージに立つ私。

 緊張で前の人がどうやって発表をしていたのか忘れてしまった私。

 なかなか始められず、周りがざわつき始め焦る私。

 そこで何かの糸がプツッと切れて発表を始める私。

 いや、あれは私じゃなかった。私の姿をした“何か”である。

 用意していた原稿とまったく違うことを言い始める“何か”。

 猫のリンと犬のレンの話のようだ。そんな話まったく知らない。私は。

 ポケットをごそごそと探り何かを出す“何か”。その手にはコンビニで売っていそうな真空パックされた調理済みの魚があった。


 いや、どこに入れてんだよ。というか、そんなの入ってなかったはずだけど。


 原稿の内容ももはや書き変わっている。リン猫がレン犬に魚をあげるシーンで、その再現がしたいのか魚の開封に手こずり、あげくの果てにポケットからハサミを取り出して真空パックを開ける“何か”。


 いや、ハサミあるんなら最初から使おーよ!というか、私のポケット某四次元ポッケなの!?


 取り出して魚を手に取り客席に投げる“何か”。阿鼻叫喚する客席。ポンポンと宙を舞う魚。



 そして急に場面展開し、私は失格を言い渡されていた。その時には私は“私”に戻っていて、何が起きたのか理解が出来ていなかった。審査員のような男性が私に


「表現が自由とは言え、やって良いこととやってはいけないことくらい、わきまえて下さい。」


 そう淡々と言われ、私は私の意思、自分がああいう事をするつもりではなかった事を説明する。男性は少し考えて、目の前に置いてあったパソコンで調べだした。


「二重人格でしょうか。何であったとしても“貴方”がしたことに変わりはない。貴方は失格です。迷惑です。お引き取りください。」




 私は思い出して絶望した。力を入れていた大会であったのに・・・

 私の心は暗い闇に巻き付かれ底無し沼に沈んでいくようであった。





 そこで再び目が覚めた。色々考えて今までのことが夢であったことを自分は悟った。夢であることを理解し、自分は心底安堵した。


 ・・・夢とは何かの暗示であったりすることがある。

ならばこの夢は何を暗示しているのだろう・・・?

初短編投稿です!o(*゜∀゜*)o

初製作短編は違う話なのですがね。

少し前にほんとに見た夢の話です。ツッコミは夢の中ではしてません。

ちょっと脚色している部分はあります。

この夢を見たあとはガチで少し怖かったです。

ご意見・ご感想、お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今ひとつ筋が見えてこない話であったのに、その夢の内容が鮮明に浮かぶよう描写されていました。強烈でありつつ、シュールで、審査員の口ぶりや、途中で取り押さえられるように終わった訳でも無さそうだ…
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