男前なりょう姉登場
「直!こんな処で、何やってんのよ!こんな時に、全然電話にも出ないで!」
突然、後ろから右肩を掴まれ、怒鳴られた。
この声は……りょう姉だ。
りょう姉は、才谷涼希という。
1学年上の、犀帝高校2年に在籍している、男前な才女だ。
振り向くと、男前にあるまじき、泣きそうな顔のりょう姉が立っていた。
泣きそうな顔だが、出で立ちは男前な、パンツに半袖シャツにジレ、小さなリュックを背負って、ハットを被ってる。
足元だけ、フェミニンにパンプスだ。
「……みんな、心配してんだから!直陰だけじゃなく、直くんまで捲き込まれてたらって!」
続けて怒鳴られた。
「え、何で?」
のほほんとした、俺の間抜けた声がした。
おい、今、俺は何にも言ってないぞ?
『僕だ、僕』
ジネンが言ったのか
「!え!もしかして、直くん、まだ、知らないの!?……なら、あぁ、いきなり、説明もしないで、ごめんなさい。てっきり、直陰と一緒だったんだと思ってた!」
りょう姉が、ハッとした様に、眼を見開いた。
「……あそこのビルで、直陰が……さっき亡くなったのよ。隣の建物の飾り塔が崩れて。直くんと待ち合わせだって、直陰が出かけてたから、てっきり……。兎に角、才谷の本家に行こう。あ、でも、ちょっと待ってて。直くんも、スマホ、返事しときなさい。みんな心配してるんだから」
そう、言うと、りょう姉が、スマホを取り出していじり出した。
「……うそ!あの崩れたんに、直陰が!だって、ここで待ち合わせが、うそ!遅れてんなって思って!えぇぇ!」
慌てて、俺は……実はジネンだがな……は、スマホを取り出して、確認を始めた……ふりをした。
ジネン……天才子役ばりに、自然すぎる演技だよ!!
『僕は高次元意識体だから、このくらいは出来るんだ!』
スマホのメッセージは、才谷直陰が死んだぞ!直柔は無事か!直柔はどこにいるんだ!が、親戚から友達、知り合いまで、1人から10メッセージ以上、合計で700件以上入ってる!!
『予想は出来ていたのを、無視してたんだろうが』
そうだけど、これは返事をしないといかんな。
『僕がうつから、直は、何もするな!』
ジネンがまた、俺の身体を操り始めた。