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第3章「素晴らしき国(前編)」

姫様の命で、この国の街を巡ることになった奏太達。

そして、謎の姫様私服盗難事件。犯人はいったい…

下は地獄、上は天国な現実世界への反逆者。

始まります!

次の日の朝。体を起こすと、ベッドの脇に服が置かれていた。この部屋にはクローゼットはあるが、ベッドの脇に置かれていたということは、あらかじめ用意されていたわけではないようだ。

よく見ると見たこともないような文字でメモが記されていた。だが、なんとなくわかる。これはハロルドが用意してくれたものだろう。そして、内容は粗方、「他人のクローゼットを開けるのは失礼にあたるので、ベッドの脇に置かせてもらいます。奏太殿達の来ていた服は何かの制服と思い、奏太殿の私服は私が用意させていただきました。」とかそういうものだろう。

僕はなんの警戒もせず、ハロルドから送られてきたであろう私服に腕を通した。

しかし、やはり言葉は通じても文字は解らないのだな。あれ?ならなんで、わざわざ読めない字で書き置きがされてあるんだ?ハロルドはこの世界の言語がわかる理由を説明した以上、僕に読めない字で書き置きすることはまずない。それに…

「…」

なんだか、下半身がスースーすることといい、胸の辺りの布が膨らんでいることといい、これは女性用の…

ドンドンとノックする音がした。そして、その後開ける音も…

「おはようございます、奏太殿、私のお古ですが、街に出る際の私服を用意しました。とりあえずは…すみません。それはどなたの衣装でしょうか?奏太殿にそんな趣味があったとは…」

ハロルドは用心のために腰に挿していた剣を抜き…

「これは亡命とは別問題ですよ。さぁ、どなたの部屋から盗んだのですか!白状なさい!」

ハロルドはとんでもない誤解をしている。

「いや、待ってくれハロルド。これはお前が夜こっそりと僕のベッドの脇に用意してくれたわけではないのか?それで着替えたら…」

「何故私が女物の服を用意するのですかー!」

その大きい声のツッコミに重戦士や姫様の臣下であろう人達が集まってくる。

「ひとまず中に入らせてください奏太殿。」

そう言ってハロルドは強引に僕の部屋に入ってきた。

「何があったのか、私にもわかりやすく教えて下さい。昨夜、姫様の寝室に何者かが侵入した形跡が見つかった後なのです。」

ハロルドは冷静になり、僕に事情を聞いてきた。

「わからないんだ。朝起きたらベッドの脇にこの服が置かれていて、書き置きもあったんだ。ほら。」

そう言って僕はハロルドに書き置きを見せた。

「…はぁ~。奏太殿に異世界の言語の翻訳の仕組みを教えたでしょう。そして、効果的には文書の翻訳は無理だともわかるでしょう。どれどれ…」

ハロルドは自分の弁護をした後、その書き置きを読み始めた。


ハロルドが僕にこの世界の言語翻訳をどうするのかを教えてくれた。ハロルドを含むこの世界の人間達は、自分の言葉を糸と解釈し、向こうの言語とうまいこと絡ませる。そんな魔法らしい。

つまり、書いてある言語を読めるという訳ではない。なんとも難しいものだ。


「えー、『女が男の格好で寝るなんて!大丈夫。私は貴方が女だということを分かってあげれるからね!』…ついてますよね?」

ハロルドは何が?何処に?とは聞かなかったが、僕を見る場所からして、言いたい事はわかる。

「あぁ、ついてるとも。そして、読めない文字で書き置きなんて出来るわけがないだろう?これで信用してもらえたか?」

「えっと…疑ってすみませんでした…」

「わかればよろしい。」

僕とハロルドはもう互いに信頼しあえる間柄になったのだろう。そんな気がする。

「しかし、こうしてみると女性と言われても信じてしまいそうですね。」

それはそうだろう。

なんせ、学園祭にある女装・男装コンテストでは毎年僕が選ばれ、学園祭からしばらくの間は群がる女子に嫉妬していた男子も大人しくなっていたからな。

だが、女装はもうしたくない。だから、これを送りつけた犯人を僕は絶対許さない。

僕がこれを送りつけた相手に怒り心頭なことを察したのか、ハロルドは、

「とりあえず、僕が用意した方の私服を着てください。小百合殿も待ってます!」

とうまいことなだめた。


とりあえず僕は着替えて、ハロルドとともに小百合の部屋に向かった。

ハロルドが小百合の部屋をノックし、「はーい」という返事が来るまで待った。僕とはえらい違いだ。

「あっ、ハロルドさん!おはようございます!ソータもおはよー!」

小百合も僕と同じように本調子のようだ。

そして、学校に通ってた時のことを思い出す。おそらく、僕らがこうして何気ない挨拶をしている間にも人は死に、土地は見る影もなくなってきているのだろう。

だが、僕はゲスであり、クズだ。そんなこと知ったことか。と我ながら最低な人間だと自己嫌悪する。

「さて!では、参りましょうか!」

だが、ハロルドの明るい声はそんな最低な自分も忘れさせてくれる。


僕とハロルドと小百合は王都へ繰り出した。

この街は凄い。歩く人間全てが明るい顔をしている。まるで、誰しも全員に幸運があったかのように。

小百合を見るに僕と同じ反応をしているのだろう。僕らの世界とは本当にえらい違う。

そして、小百合の私服を見て、気になった。

「そういえば、小百合の私服はどうしたんだい?」

僕はハロルドに尋ねた。

「エレちゃんがくれたんだよー!」

小百合があまりにも明るく返答するものだから、『エレちゃん』が誰かわからなかった。そうか、エレナ・リパイド・エクソシスティー。要は姫様か。

「小百合殿はもうずいぶんと姫様と仲良くなられたのですね。」

ハロルドはまるで自分の娘に友達が出来た時のような笑顔だ。

そして、もう一つ気になったことがある。

「姫様の服ドロボーって、姫様が小百合にあげた私服を自分で無いって言ってうっかりしてだけなんじゃないか?」

僕の質問にハロルドは

「いや、恐らくあれは姫様のいつもの…いえ、なんでもありません。」

途中で遮られただけに、余計気になる。帰ったら問いただすとしよう。

「あっ、ここに我々が巡った世界で我々にもできそうなゲームが揃っているところがあるんですよ。行きませんか?」

ハロルドが話を逸らすかのように、右の店を指差した。だが、ゲームと聞くと、ちょっと惹かれたりもする。

「私が面白いと思うのは的を射るゲームですね。射撃訓練にもなるから丁度いいんですよ。」

僕達はゲームセンター(仮)に行くことにした。

しかし、この後僕らは建物の風通しをよくしてしまう。


「すっかり失念していました…」

あぁ、僕もだ。ハロルド。そうだよな、魔力が主な兵器なこの国で魔力を使わないゲームがないわけないもんな…

「私やハロルドさんがやる分には楽しかったけど…」

小百合、それ以上言うな。

「ハロルド…」

「分かっています…魔力を使うゲームはもうやりません…」

「因みにあれは的を木っ端微塵にすると何点入るんだ?」

「さぁ?…今までも的を割った輩は何人かいましたが、大体は一日経てば元通りなので然したる影響はありませんでしたが、完全に破壊すれば…ちゃんと元通りになるのかな…」

僕は改めて、自分の魔力がいかに突出したものなのかを思い知った。

みんなが僕の魔力に呆れていたその時…

「ひ、人殺しだぁー!」

その悲鳴にハロルドの目つきが変わった。

「小百合殿、住民のみなさんと一緒にいてくれませんか?」

「わ、わかりました!」

「奏太殿、あなたもです。住民と一緒にいてください。大丈夫。この国は国民の方々も充分お強い方々ばかりですから。」

「わかった。頑張れよ!」

僕と小百合は散らばった住民達の一つに付いていくことにした。

「お前さん方、武器を持ってねぇのか。仕方ねぇ、一本しかないが、こいつをくれてやらぁ。」

荒っぽい口調と共に中年の男性から、鞘にも入っていない剣を投げて渡された。

「なまくらだが、無いよりはマシだろ。」

どうやら、僕に剣をくれたのは服装からして鍛治屋の人のようだ。鍛治屋がなまくらを渡すということは金にならない刀をやるということだろう。だが、自衛用には充分だ。

そして、鍛治屋の男は

「この国じゃ、危ない人間は住民で囲んで、リンチにして殺すんだ。死に方が惨い分、危ない奴なんてそうそう現れねぇけどな。」

と作戦も丁寧に教えてくれた。いや、でもおかしい。

「何故、僕らがこの国の民じゃないとわかったんですか?」

それに男はこう切り返した

「そりゃお前、武器の一本も持たないで歩く馬鹿はこの国じゃいねぇからだよ。拳闘士でも、自衛用に刀くらい持つぜ。おっと、自己紹介を忘れてたなぁ。俺はゴルグ。この街で鍛治屋をしている。もっと言うと、元王族専任の鍛治屋だった男だ。まぁ、今じゃ、街の住民共に失敗作の剣を売りつけるしがない鍛治屋だがな。」

僕は剣をよく見てみた。改めて見ると、どちらかと言うと日本刀に似ている。そう感じた。撫でても指が切れない。どうやら本当になまくららしい。

「もっと言うと、俺はさっき飛び出していった馬鹿野郎の父親の友人であいつの師匠でもある。あいつから、お前らの事情は聞いたぜ。特に小澤奏太?だっけな。お前は姫さんをバカでかい魔力で魅了したんだってな。そんなお前にその剣は馴染むと思うぜ。なんせ、魔力効率だけは一級品だ。剣を掲げて、飛ぶ火を念じてみ。」

僕は言うとおり、剣を掲げて、火を念じてみた。

すると、放たれた火は最初は小さく燃え、上に上がっていったが、上がっていく度、火もまた大きく、激しくなり、空まで飛んでいくと、まるで伝説の不死鳥のように大きく燃え、次第に消えていった。かなり上空のため、街に被害はなかったが。

しかし、どうやら、さっきの炎は大衆の目を引いたらしい。それは殺人者も例外ではなく、情けない悲鳴を上げ、武器をハロルドに飛ばされていた。

「今だ!取り囲め!」

その掛け声とともに殺人者を住民全員が取り囲んだ。

「このっ!」「おらぁ!」

あまりにも惨い光景に足が動かなかった。どうやら、小百合も同じようだ。

やがて、騒ぎが収まり、その場には怪しいローブを着た人間と、殺人者だったものだけが残った。

ローブを身にまとった人間はどうやら、死体を持っていくらしい。死体はそのローブ達の実験材料にでもされるのだろう。

そこにハロルドが戻ってきた。傷一つなく、激しい運動をした後のような爽やかさで。

そのハロルドに小百合が近付いて、

「ハロルドさん…その…この国では罪人に罰は与えられないんですか?」

「小百合殿、この国は罰などという風習はございません。ただ、みんなが怖いから力を合わせて戦う…自分自身の力で。」

僕らの世界にも似たような言葉がある。『自分の身は自分で守れ』

だが、僕らの世界では暴力は禁止され、自分の身を守る術は、醜い言葉の罵り合いだけだ。今思うと、吐き気がする。

恐らく、この国のやり方の方が住民一人一人が団結できるというメリットも含め、一番建設的なのだろう。

だが、言葉と知識がほとんどの世界で生きてきた僕らにはそれがあまりにも残酷で受け入れがたかった。

はい!どうもディーです!

もうストーブが恋しい時期になりましたね。

私の住んでるところは北国なので、夜中は地獄でトイレにも行けません(笑)

いや、まぁそれでも行きますけどね!

私の今執筆してる部屋も電気ストーブが置いてあるのですが、一向に温かくなる兆しが見えません(笑)

読者の皆さんも寒さに気を付けてくださいね。

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