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HELPしますよ、皆さん方  作者: 翠玉緑
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第一HELPと一人暮らし

第一作です。不定期更新です。よろしくお願いします。

黒髪で少しニヤニヤとした表情で佇んでいる男がいる。名前はサクラ。彼の表情の原因は、今日から始まる彼の一人暮らしにあった。


実家を出たのは自分に合った仕事につくため。別に一人暮らしをするためというわけじゃない。だが、いざ一人暮らしを始めるとなると楽しみじゃないわけがない。部屋を自分色に染められるのだから。


ニヤニヤしながら家の家具の配置について色々と考えていたサクラは何かを思い出したように家を出る準備を始めた。何故なら今日は初出勤日だからだ。サクラは準備をしながらもニヤニヤしていた。仕事も楽しみだが、何よりやっぱり一人暮らしが楽しみだった。


玄関を開けたサクラは、楽しみすぎて部屋の方を見つつ、絶対帰ってくるからねーと言いながら家を出て歩きだす。すると、何かが足にぶつかり、こけそうになる。ぶつかられたものはうぅーと唸っている。そのものをみてサクラのニヤニヤも一気に収まった。サクラはそのものを自宅へと運び、まだ一度も寝たことの無いベッドに寝かせた。


数時間後、倒れていたものが目を覚ました。

そのものは、まだ状況が飲み込めていないようで、サクラの顔と周りの物を交互に見ていた。


「大丈夫?」サクラが声をかける。

「あ、はい、大丈夫です。疲れて寝ちゃってただけです」

「あんなところで?」

「はい、ごめんなさい…」

「あーいやいや、別に責めてるわけじゃないよ。でも、あんなところで寝るなんて何かあったのかなーって思っただけ。もし何かあったんなら言ってくれれば、出来ることはするよ」


その少女は、少し考えて話始めた。

「私…実は…」そう言った途端、ぐぅーーーー、とあまり聞いたことの無い長さの空腹を告げる音がなった。

少女はそれまで合わせていた目をサクラから逸らし、急激に顔を赤くした。


サクラは気まずそうな少女のために、何か食べるものをだし、場の雰囲気をよくしようと思った。が、生憎、引っ越しをしたばかりで家に食料はない。まあ、本当はないわけではない。一つだけあるっちゃある。今朝買ったスルメが。移動中に食べようと思って買ったものだ。果たして、お腹を空かせている少女にスルメを出すべきなのか。あの、噛みごたえのある、食べるのに時間がかかるスルメを。


悩んだ結果、サクラは少女にスルメを差し出すことにした。だって、少女は最初のぐぅーーーーから定期的にお腹をならし、その度に顔を赤くしていて、今は爆発しそうなほどに赤くなっているから。


「あのさ、これ食べる?」サクラは、手に持っているスルメを差し出す。

「あ、ありがとうございます…」案の定彼女は苦笑いをしていた。まあ、そらそうでしょう。俺だってそうなるわ。


しかし、彼女は苦笑いをしていたが、こちらに気を使いしっかりとスルメを食べてくれた。ええ子や。


スルメをいくつか食べ、彼女のお腹もならなくなったところで、サクラは先ほどの話を始めるように勧めた。


「実は私、昨日記憶を失ってしまいまして…まだ、記憶が戻っていないんです」

「え、記憶喪失ってこと?」

「そう、なりますね…」

「何か覚えてることはある?」

「いえ…家族のことも…家のことも…私の名前さえも思い出せません」

「なんで記憶を失ったのかも思い出せないの?」

「はい…」

「そうなんだ…」

サクラはスルメを差し出すときのように、少し考えてからまた話始めた。


「あのさ、今日泊まるとことか決まってる?」

「いえ、決まっていないです」

「もしよかったらなんだけど、記憶が戻るまで家に泊まる?」

「え?でも、そんな…」

「俺さ、人を助ける仕事につくんだ。まあ、今日からなんだけど。だからさ、最初の仕事として、助けさせてよ」

サクラは何の下心もなく、本心で言っていた。


「でも、私、何もお返しできないかも…」

「いいのいいの、そんなのいいの。言い方変だけどのびのび記憶戻しちゃって」

「…じゃああの、よろしくお願いします」

少女に少し笑顔が戻った。その笑顔を見た、サクラはあることを思いついた。

「あのさ、名前も覚えてないんだったよね」

「はい」

「何て呼んだらいい?」

「そうですね…うーん…どうしましょう」

「さっき笑ってるのを見て思いついたんだけどさ、オヒメってどう?」

「え、オヒメですか?」

「うん。さっき笑ってたとき直感でオヒメだって思ったんだけど、どうかな」

「じゃあオヒメでお願いします。何か可愛いですし。ではあの、私はなんとお呼びしたら…」

「ああ、まだ名前言ってなかったね。俺の名前はサクラ。俺のことはサクラって呼んで」

「では、記憶が戻るまでお世話になります、サクラさん」

「うん。記憶戻るまで一緒に頑張ろうオヒメ」

「はい」


「それでさ、オヒメ」

「はい、何ですかサクラさん」

「俺さ、今から仕事場にちょっと顔出さなきゃ行けないんだけど、一人にしても大丈夫?」

「あ、はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


サクラはオヒメを家に残し仕事場へと向かった。仕事場はサクラの家から歩いて30分くらいの所にある。今日は初日のため仕事場に顔を出すだけでいいらしい。引っ越しをする前に顔を出したことがあるため、緊張はしていない。


仕事場に挨拶に行ったものの、そこには数人しかおらず、ものの数分で話し終わった。そのため、帰りに弁当を買ったが、一時間ちょっとで家に帰ることができた。


「オヒメー、大丈夫だったー?」晩ご飯の弁当を片手に持ち、サクラは部屋に入る。そんなサクラの目に映ったのは、立ちながらポロポロと涙を流し、サクラの方を見ているオヒメの姿だった。


「オヒメ、どうしたの!?」

「サクラさんがいなくなってから…また、不安になっちゃって…サクラさんは帰ってこないんじゃないか…また、一人になるんじゃないかって…思っちゃって…そうしたらサクラさん帰ってきて」オヒメは泣きながら、途切れ途切れに言う。


「安心して泣いちゃったのか」

こくりと頷く。

「そらそうだよな。今までずっと一人でいて、やっとそれから解放されたと思ったのに、また一人にされて。そら不安になるよな。ごめん、オヒメ」

首を横に振っている。あなたのせいではないです、そう言ってるようだった。


サクラはオヒメの頭を撫でながら、一人にさせないから、そう言った。


「オヒメ、泣きつかれちゃったでしょ。まだ晩ごはんには早いし、少し寝てな」

「はい」

「あーあと、敬語やめない?敬語使うと距離感じちゃって、また不安になるかもしれないし。それに、ただでさえ慣れない環境の中で生きづらいのに、もっと生きづらく感じちゃうでしょ?だから、やめない?」

「はい」

「えー、はい?」ニヤニヤしながらオヒメの顔をのぞく。

「うんだね」ニヤニヤに感染したようにオヒメはニコッと笑う。


ベッドに入ったオヒメにサクラは話しかける。

「家ではさ、ばんばん自分のやりたいようにやっていいから。それで追い出したりとか絶対しないからさ」

「うん、分かった。じゃあ、起きたらオヒメのやりたいようにやるね」

「おう、じゃあおやすみ」

「うん、おやすみ」


数時間後、サクラは驚愕した。

「ねーサクラー、何かジュース無いのー?無いんだったら買ってきてよー。喉乾いたー。早くー、買ってきてよー。は・や・く。は・や・く」

何かすっげー生意気になってた。やりたいようにやっていいよって言ったけど、ここまで変わるとは思わなかった。えー、何かビックリ…


あ、そう言えば一人暮らしじゃ無くなったなー…………









長くなりました。

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