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宿題

 

 終業式から3日後僕は家で何をしているのかというと、シャーペンを握り締め宿題という名の敵と熱戦を繰り広げていたのだが、ある理由によってどうしてもはかどらない。

 そのある理由とは他でもない青鷺加奈子である。

 僕が集中して勉強をしているとことあるごとに、


 「ねえ隆、私を幸せにしないとこの世は滅んじゃうんだよ?そんなことをやっている場合なの?」


 そんなことをやらないと僕の高校生活が滅んでしまうだろう。

 加奈子は見とれてしまうほど鮮やかな青髪を振りまいていじけている。

 まったくどうして勉強に集中させてくれないのだろう。

 この調子だと祭り前に宿題を終わらすことができないじゃないか。

 まあ終わらさなくてもまだ余裕はあるのだが、全力で楽しむためには宿題を終わらせなければいけない。


 「暇だな〜、暇だな〜」


 「暇だったらテレビでも見たらどうだ?」

 

 僕がそう言うと、加奈子はいじけた表情をして、


 「全く隆はわかってないな〜、女心を」


 まさかこいつから女心なんて言葉が出るとは予想もしていなかった。

 どうやらかまってほしいみたいだな、しかし僕にだってやらなくちゃいけないことがあるんだ。


 「分かったよ、後で遊んでやるからとりあえずテレビでも見てろ」


 「本当に!?じゃあゲームだね!」


 そう言うと加奈子はリビングへと戻って行った。

 勉強妨害少女が去ったところで集中するとしますか。

 それにしても加奈子の成長は著しいものがある。

 最初にあった頃は学校ということすら知らなかったくせに今ではゲームができるほどにまでなった。

 もしかして成長期か何かなのだろうか?

 まあ子どもの成長が早いのは当然か。

 僕は心を切り替えて勉強に専念した。


 「よし、やりますか」


 


 1時間ほどしただろうか、僕の集中力に限界がきたようだ。

 休憩がてらに加奈子の相手をしてやろうとリビングに行くと、加奈子はゲームのコントローラーを握ってスタンバッテいた。

 どんだけやりたいんだよ。

 僕は呆れながらも、もう一つのコントローラーを握り準備を始めた。


 「本気でいくからね!」


 「お手柔らかに」


 そのゲームはいわゆる車で競争する類のやつなのだが......

 弱い、弱すぎるぞ。

 加奈子はプレイ中コントローラーを振り回しながら「とりゃっ、えりゃっ」と掛け声をあげていた。

 その加奈子を見ただけでは格闘ゲームをやっている風にしか見えないだろう。

 現に僕はその加奈子の振り回した腕に何度もバシバシと額を殴られている。

 もっと落ち着いてゲームできないのかよこいつは......

 しかし相変わらずの笑顔である。

 もちろん笑顔だからといってなんでも許されるわけではないのだが。

 

 試合は10戦10勝0敗、もちろんこれは僕の記録である。


 「もっかい!もっかい!」


 「ダメだ、僕はまだ勉強中なんだ、それにお前は下手すぎるだろ、もうちょっと練習をしろ」


 僕はそう言うとコントローラーを置き部屋へと戻って行った。

 さてあと2時間は勉強しなければいけないだろう。

 でなければ全然終わる気配が見えない。

 



 勉強を再開して30分が経とうとしていた時、僕の携帯の音が鳴った。

 どうやら知恵子からの電話らしい。

 こっちから電話をかけることはよくあるがむこうのほうからかけてくるのは珍しい。

 僕はなんだろうと疑問に思いながら電話に出ると、


 「隆くぅーん!慰めてぇー!!」


 いきなりそんな大声で泣き叫ばれた。

 いったいどうしたというのだろうか。

 知恵子がこんな風になるなんて初めてではないだろうか。

 もしかして一世一代のキャラ変だろうか?

 だとしたら結構悪くないと思ってしまう僕がいる。


 「どうしたんだ?らしくないぞ」


 「親と喧嘩したのぉ!!」


 そういえば進路のことで親ともめているようなことを前に言っていたな。

 

 「何で喧嘩したんだ?お前が喧嘩するなんて珍しいにもほどがあるだろ」


 「進路のことで......」

 

 やはりそうだったか、しかし天才秀才奇才女の加奈子が進路で親と喧嘩なんて言ったら、僕の場合殺し合いをしても足りないだろう。


 「お前はどこの大学に行きたいんだ?」


 「女優になりたいの」


 「は・・・・・・?」


 ん?聞き間違いだろうか?

 なんだか不思議な発言を聞いた気がするのだが。

 

 「だから女優になりたいのよ!」


 「初耳なのですが!?」


 かなり長い付き合いのはずだが僕はそんなこと初めて聞いた。

 まさか加奈子にそんな夢があったとは。

 でもそれなら親が反対する気持ちもわかるきがする。


 「とりあえず大学は出といた方がいいんじゃないか?」


 「それはわかってるけど......保険をかけてるみたいで嫌なの」


 確かに、女優には学力は大して必要ないのかもしれない。

 もちろん僕は女優の知識は一切ない。

 有名な女優の名前すらほとんど知らないくらいだ。


 「でも大学と女優を両立している人だっているだろう?」


 僕に言えるのはこれくらいのことしかない。


 「そうだけど......」


 そう言うと加奈子は黙ってしまった。

 言ってはいけないことを言ってしまったのだろうかと心配になる。


 「まあ今は勉強に集中した方がいいんじゃないか?」


 「うん......」


 加奈子は「じゃあね」と言うと携帯を切ってしまった。

 加奈子を慰めるのは僕には難しいみたいだ。

 これじゃあ幼馴染失格だな。

 いつも相談に乗ってもらっているのにこういう時に役立たずでは仕方がない。

 今度はもっと上手に相談に乗ってあげなくちゃな......


 僕は頭を切り替え、勉強モードにしたところで、


 「ねえ隆!お腹すいた!」


 どうやら勉強は終わりそうにない。


 


 

 




 

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