夏休み計画
一学期最後の登校日、要するに終業式の日、僕と知恵子と光一の3人で夏休みの計画を立てていた。
できればここに加奈子を入れたいのだがそういう訳にもいかないだろう。
「やっぱり夏といったら海だよな!海!」
「それは去年も、一昨年も聞いた言葉だぞ」
僕は呆れて溜息を吐いた。
まあ毎年海には行っているから今年も行くだろうとは思っていたが、やっぱり光一から海という単語が出たか。
しかし今年は去年や一昨年とは訳が違う。
僕の家には加奈子がいるのだから。
行くとするならば加奈子を連れていく必要がある。
まあ連れていくのは全然いいし、むしろそっちの方が加奈子にとっていいのかもしれない。
普通に考えれば夏に海や祭りに行くほど幸せを感じることはないだろう。
「私は祭りに行きたいな〜」
「それがいいな、そっちの方が近いし」
僕はすぐさま知恵子に一票を投じた。
なんとなくなのだが加奈子を海に連れていくのは気がひける。
祭りならいろんな食べ物があることだしあいつも喜ぶに違いない。
「もちろん祭りもいいけどよー」
どうやら光一は納得がいっていないようだ。
「やっぱ夏といったら水着美女を探さなくちゃいけないだろ?」
「夏にそんな決まりはないぞ」
相変わらず自分の欲望に忠実なやつだ。
長い付き合いではあるが、こればっかりにはついていけない、いやついていきたくないといった方がこの場合正しいだろう。
ついていったら自分じゃ無くなる気がする。
「隆君は加奈子ちゃんを連れてくるんでしょ?」
知恵子はいきなりそんなことを言った。
光一にはなんにも説明してないのだから、言って欲しくはなかったのだが、まあ別に問題はない。
光一に知られて何かある訳でもないし。
「ああ、あいつを1人にする訳にはいかないからな」
「お!例の彼女か!?」
「僕は彼女だなんて一言も言っていないぞ」
一体いつになったらこの冷やかしが終わるのだろうか。
さすがに否定するのも疲れてきたぞ。
「じゃあ夏休みは祭りってことでいいかしら?」
「チッ、しかたねー、浴衣美女で我慢してやるか」
こいつの価値基準はよく分からないとこがあるな。
まあそれはさておき、祭りか......
加奈子に浴衣を用意してあげようか。
きっと似合うに違いない。
あんな地味な帽子が似合うくらいなんだ、浴衣なんて着せたらそれはもう美しいことになるだろう。
なんだか楽しみになってきたぞ。
だがしかし、一つ大きな問題がある。
夏休みに学生を悩ませるといえば一つしかないだろう。
そう宿題だ。
この学校はなかなかの進学校のためなかなかに宿題が多い。
昨日宿題が配られたのだが、あまりの量に貧血を起こしそうになったくらいだ。
どうも夏休みは遊んでばかりいたら死ぬような気がする。
「問題は宿題をどうするかだよな」
俺がそう言うと2人は不思議そうな顔をして、
「もう宿題なら終わらせてしまったのだけれど」
「普通初日に終わらすだろ?」
「おい、知恵子はともかく光一はそんなキャラじゃないはずだろ!」
なんで光一が初日に宿題終わらせてんだよ!
ギャップがありすぎだろ!
夏休みの最終日に必死になりながらやるキャラのくせに!!
それはともかく僕は当然のことながらまだ宿題には手をつけていない、ノータッチである。
僕は毎日コツコツやる派なのだから仕方がないだろう。
しかも今年は加奈子の相手をしながら宿題をすることになる。
かなりのハードモードだ。
夏休みが心配になるばかりだ......夏休みの前日だというのに。
とりあえずこれで夏休みの計画立てはお開きになった。
祭り以外にも他に行きたいところだが、それはまた今度決めればいいだろう。
祭りは今日から数えて一週間後。
ここら辺の地域では最も大きく最も盛り上がる祭りだ。
もちろんこの祭りも毎年行っている。
だがしかし祭りというのは毎年行っても飽きないのだから不思議だ。
祭りからは何かパワーを感じるものがある。
この祭り前になんとか宿題を終わらせたいな。
そのためには今日帰ったらすぐに勉強に取り掛からなくては。
加奈子はきっとリビングでバラエティー番組を見ているだろう。
なぜか最近加奈子はテレビに興味を持ったらしく、かじりつくようにテレビを見ている。
映画はすぐに寝やがったのに......
まあ楽しいならいいのだが。