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騒がしい日常

 

 月曜日、数日後に夏休みが待ち受けているその日、学校に行くと教室が何やら騒がしかった。

 一体どうしたのだろうと思っていると、


 「本人のご登場だ!!」


 僕はいきなりそんなことを言われた。

 それは本当に突然すぎて、最初僕に言っているのかどうかすら分からなかった。

 いったいどうしたのだろうか?

 僕はそんな特別な人間になった覚えはないし、実際にそんな人間ではない。

 僕程度の人間が教室に入っただけでこんなに騒いでいたら隣の教室どころか、下手をしたら近所迷惑にすらなりえるのではないだろうか。

 

 「おい、いったいなんのことだ?」


 僕がそう言うと教室にいるみんなはニヤニヤした顔をで、


 「昨日、美少女を連れて町を出歩いていたことはすでに知っているんだよ隆君!」


 まさかそのことでこんな騒ぎになっていたのか。

 あいつの可愛さはどうやら学校にまで影響を与えるらしい。

 相変わらず恐ろしい。

 

 「ついに隆も犯罪者か〜」


 「おい、僕があの子を誘拐したみたく言うのはやめろ、ただの親戚の子だって」


 僕がそう説明してもみんなはどうやら聞く耳を持つ気は毛頭ないらしい。

 なんて一方的なやつらなんだ。

 それにしてもこの話を広めたのはどうせ光一のやつだろう。

 後でたっぷりと反撃をさせてもらうとしよう。

 しかし残念なことに光一は違うクラスなんだよな。

 そんなことはどうでもいいことなのだが。

 

 まあ人の噂も七十五日というし気にすることはないだろう。

 七十五日は長すぎる気もするが。

 

 しかしそんなうるさい教室もホームルームが始めれば静かになる。

 ほんとさっきの元気はどこにいったんだというばかりに。

 まあ所詮僕の話題なんてそんなところであろう。

 そっちの方が僕にとってはいい。

 

 授業中はずっと加奈子のことを心配し続けていた。

 あいつを1人で家に置いてきておいていいのだろうか。

 もちろん学校に連れてくる訳にはいかないのだが。

 それにしても餓死してなければいいが。

 一応昼飯は作っておいたし、心配はないだろう。

 あいつが来てから心配ばかりしている気がする。

 これでは心が持たないな。

 授業にも集中できないし。

 元々授業に集中するタイプではなかったけど。


 放課後、いつものように僕は知恵子とどうでもいい会話で暇を潰していた。


 「ところで、隆君の女の子の話なんだけれど」


 「僕の所有物みたいない言い方はやめてくれ、誤解を生むだろう」


 全くもって心外だ。

 加奈子は誰のものでもない。

 だからあいつは自由なはずだ.....そうでなくては可愛そすぎる。


 「私の勘なのだけれど、どうも普通の人間じゃないような気がするのよね」

 

 こいつは化け物か。

 会ったことも喋ったこともないはずなのに、そこまで予想してしまうなんて。

 どうしよう、このまま誤魔化そうか、それとも......


 「仮にそうだったとしたらどうする?」


 「別にどうもしないわよ、どうもしないからこそ気になるんだよ」


 知恵子には本当のことを言っておいた方がいい気がするな。

 この先何度も助けてもらうことになるだろうし。

 僕は何ども困った時の知恵子頼みをするはずだ。

 しかもどうやら知恵子は俺の言うことを信じてくれそうな気がする。

 何も言わなくても普通の人間でないと当ててしまうほどなのだから。


 「実は......」


 僕は知恵子に加奈子の事を詳しく説明した。

 出会いから昨日のことまで、余すとこなく隅々と。

 もちろんこの世にいてはいけない存在だということも。

 

 それを聞いた知恵子は、


 「へ〜、そういうことか」


 知恵子は納得したような表情をしてそう呟いた。

 今の説明でどうやら納得したらしい。

 さすが天才秀才奇才女だけある。

 こんな不思議な話を簡単に飲み込めるなんて。

 

 「よくこんな話を信じることができるな」


 「だってこの世の常識だけが正しいとは限らないじゃない、まだ人間が知らない、人間で言う非常識な存在、いたらおかしい存在、そんなのがいてもおかしくないと私は思うよ」


 確かにまだ人間の知らないことはたくさんあるが、それが理由でこんなにすぐ信じてもらえるとは。

 さすが幼馴染といったところか。


 「それで、隆君はこの世界と加奈子ちゃん、一体どっちを選ぶのかしら」


 そんなの選べるはずがない。

 それは今日までにも何回も考えてきたことだが答えが出るはずがない。  

 なぜならそれには答えなんていうものは存在しないのだから。

 この先もずっと考えるだろうが、一生かけても答えなんて見つけることはできないだろう。


 「そんなの知らねーよ」


 そう言うのが今の僕には精一杯だった。

 それ以上の言葉は今の僕には発言する権利も、その重みを背負う度胸もありはしない。

 それくらい今の僕はちっぽけで力のない存在なのだ。

 


 


 

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