思い出
土曜日ということもあってか街角は随分と人で溢れ返っていた。
ただでさえ夏の日差しで暑さに耐えかねているのにこんなに人がいたらもう溶けてしまってもおかしくはないだろう、いやさすがにそれはおかしいのだが。
とりあえず外にでて最初に映画館に向かったのだが、上映時間まで随分とまだ時間があったため今はいろんな店を回っているところだ。
加奈子の可愛さはやはり目立つらしく周囲の人間の目線が辛い。
マスクとグラサンでもさせておけばよかったと後悔しているところだ。
それをしてもなお余りある可愛さなのだが......本当そこがしれない可愛さだ。
百均に入ってみると加奈子のテンションはマックスになった。
どうして百均でそんなにテンションが上がるのかは知らないが、どうやらいろんな商品に囲まれるのが相当嬉しいらしい。
相変わらず単純なやつだ。
「いろんな物があるよ!すごーい!!」
バカ丸出しだからこれもかなり恥ずかしい。
近くに人がいたら大爆笑されているところだろう。
楽しそうで何よりなのだが......もうこの店入れないかも。
そんな事をしているうちに上映時間が近づいてきたため、映画館へと向かった。
映画館に入るなり加奈子は、
「おおきなスクリーン!!すごーい!!」
本当に子どもだな、そう思ってしまう反応だ。
しかしいちいちそんなでかいリアクションをしていたら疲れて仕方がないだろうに。
今日も直ぐに寝てしまうに違いない。
指定された席に座り、ポップコーンを置いてあげると想像通りの大きなリアクションをした。
本当にこいつはなんでも喜ぶな。
映画はアクション映画で結構有名な俳優が勢ぞろいしていた。
上映時間は2時間弱で、加奈子は開始10分ほどで寝てしまった。
どうやら映画は失敗らしかった。
次連れて行くなら遊園地とかの方がいいかもしれない。
寝てしまったら連れてくる意味がないからな。
それにしてもこの映画......かなり面白い。
上映が終わると僕は加奈子を起こそうとしたが全然起きる気配がないため、仕方なくおぶって行くことにした。
想像以上に加奈子は軽く、簡単に持ち上がってしまった。
今度体重を計らせてみようか?
とんでもなく低い数値を叩き出すに違いない。
レストランまでは映画館から思いの外近かったため助かった。
少女をおんぶして道を歩くのは想像以上に恥ずかしい。
レストランに着くと結構空いていたため直ぐに席に着くことができた。
食べ物の良い匂いに反応したのか加奈子は急に目を覚ました。
目の前に置いてある注文用紙を見て目を輝かせている。
あんまり高い物を頼んで欲しくはないが、加奈子は見た目通り少食のためそこまで心配はいらないだろう。
「これ全部食べれるの!?」
「その中から選ぶんだよ、全部も食べれないだろう」
加奈子は真剣な眼差しで注文用紙を眺める。
これは結構時間がかかりそうだ。
僕は注文用紙を眺めて直ぐにハンバーグステーキに決めた。
加奈子が注文を決めたのはそれから15分ほど後になってからだった。
注文していた品が届くともう加奈子は大喜びで箸を動かした。
どうやら箸も使うことができるらしい。
そんなどうでもいいことに感心しつつ僕も食事を進める。
食べ終わるともう時刻は2時を過ぎていた。
時間はまだあるが他にすることはないし、とりあえず今日はいいかと思い帰ることにした。
帰り道加奈子の手を握りながら歩いていると見なれた男を見つけた。
その男は土曜日なのにもかかわらずワイシャツ姿でなぜかサングラスをかけていた。
「お!隆じゃん!こんなところで何してんだよ、お前昨日電話急に切っただろ、ってかその美少女は誰だよ!?」
相変わらず光一はテンションが高いやつだ。
一回のセリフで三つも言葉を繋ぐなんて、器用なやつだ。
さて、いったいどうして、この状況を説明しようか、美少女の手を握りながら町を歩く。
「ああこいつか、俺の親戚の子で今この町を案内してるんだよ」
こんなところが妥当であろう。
しかし光一は疑いの眼差しを俺に向ける。
「本当に親戚か?まさか俺に内緒で彼女作ったんじゃないだろうな!?」
「そんな訳ないだろう!」
「まあ普通に考えて隆に彼女ができる訳ないか」
おい、なんでそうなる。
俺に彼女ができるのがそんなにおかしいか?
確かにかなりおかしくはあるが、絶対にないとは言い切れないだろう。
そんな事を言っている時点でもう彼女なんて出来なさそうだが。
まあとりあえずは光一を納得させることができたみたいで良かった。
その間ずっと加奈子は不思議そうな顔をしていたが。
光一に別れを告げると家に向かってまた歩き出した。
一応加奈子に聞いてみようと思い、
「どっか他に行きたいところとかあるか?」
「分からない」
やっぱりそうか、まあ今日は十分すぎるほど1日を満喫したしいいだろう。
そんなに無理しても仕方がないだろうし。
とりあえず今日はノルマ達成ってことで。