表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

土曜日

 

 朝目を覚ますと隣に加奈子が眠っていた。

 なんで眠っているかはもちろん知らないが、なんだがデジャブを感じざるおえないな。


 「おい、なんでここで寝てんだよ?」


 「ん......朝......?おはよう」


 「おはよう、じゃなくてお前はあっちの部屋で寝ていたはずだろう?」


 「知らない......気づいたらここ」


 一体どうすればそんな現象が起きるんだよ。

 まあ不思議度マックスのこいつに聞いても仕方がないのは分かっているが。


 「朝飯にするか」


 「するする!ご飯食べる!」


 どうやらこいつはご飯が大好きらしい。

 ご飯ばっか食べさせれば幸せ感じていなくなるんじゃねーのって思うほどだ。

 それにしても案外こいつは単純なのかもしれない。

 それだったら今日は土曜日だしどこかに連れて行こうかな。


 「朝飯は何がいい?」


 「パン!パン!パンがいい!」


 こいつは学校は知らないのにパンは知っているのか。

 どうやら偏った知識を持って生まれてきてしまったらしい。


 「食パン焼いたのでいいか?」


 「それいい!」


 こいつは食パンで大満足らしい、随分と食費に優しい作りになっている。


 僕は台所に行くと前に買いだめしておいた食パンを取り出し、トースターに二枚挟み込んだ。

 スイッチを入れ数分待つ。

 出てきたパンにバターと砂糖をつけるといった簡単レシピ。

 定番中の定番だ。

 僕はそれを加奈子が座っているテーブルの前に置いた。


 「何これ!?美味しい!!甘い!!」


 どうやら大好物らしい。

 まあこいつはどんな食べ物でもこういった反応をするのだろうが。

 それはいいとして、こいつは一体どんなパンの食べ方をしてるんだよ。

 手を使わずに犬みたいに食べてやがる。

 昨日は普通にスプーンを使っていたがどうやらパンの食べ方は分からないらしい。

 本当に偏りすぎてる知識だな......

 もうちょっと統一性があればいいんだが。


 僕と加奈子がパンを食べ終わると皿を片付けある事を聞いてみた。


 「どっか行きたいとこあるか?」


 「隆と一緒ならどこでもいい」


 嬉しい事を言ってくれる。

 けどこの場合何か言ってもらわなくちゃ行くところが決まらないから困る。

 まあこいつに聞いても分かるわけないか、パンの食べ方すら知らなかったようだし。


 僕はため息を吐きつつ肩を落とす。

 どうやら自分で考えないといけないらしい。

 だがもちろん彼女ができた事がない僕にそんな事を考えさせるのはひどいというものだろう。

 仕方なく携帯を取り出し、知恵子に電話をかける。

 困った時の知恵子頼みだ。


 「あ、もしもし知恵子?ちょっと聞きたい事があるんだけど」


 「何?こんな朝早くから、デートスポットでも聞きたい?」


 相変わらずの勘の鋭さだ。

 しかしデートとは少し違うような気がするが、どちらかというと観光案内だ。


 「まあそんなところではあるが......女の子が連れてってもらったら嬉しいところとか」


 「無難に映画館とかショッピングセンターでいいんじゃない?そんなに難しく考えなくても」


 映画館か......ちょうど見たい映画があったぞ。

 話の内容は全く知らないが、CMを見てすごく面白そうだったやつ。

 まああとはレストランとか行けば間違いないだろう、こいつは食べ物ならなんでも喜びそうだしな。


 「分かった、ありがとう」


 「いえいえ、それより隆君がデートなんてどう間違えればそうなるのかしら?」


 「おい僕はデートなんて一言も言っていないぞ、しかもそんなに俺がデートするのがおかしいか!?」


 案外傷つく事を言ってくれる。

 まあ冗談だということは分かっているが、それでも心に響くものがあるぜ。


 「何はともあれ頑張ってね、それじゃ」


 そういって電話は切れた。

 とりあえず行くところは決めた。

 映画とレストラン、これで間違いはないだろう。

 最初はこんなところでいいはずだ。

 ていうか本当にこれでいなくなるのだろうか?

 もちろん加奈子にはいなくなって欲しくないが、これでいなくなるんて考えられない。

 まあこの世の常識で考えちゃいけないのは分かるが。


 「よし、出かけるか!」


 「うん!」


 しかしこいつの髪は目立つな。

 さすがに青髪の少女を連れて町を歩くのは恥ずかしい。

 そこまで長い髪じゃないし、帽子で目立たない程度にはできるか。

 僕は自分の部屋に戻りクローゼットの中から一つの帽子を取り出した。


 「これでいいか」


 その帽子は僕の帽子コレクションの中で最も地味で、最も大きいサイズの物だ。

 これならそこそこ髪を隠せるはずだ。

 

 加奈子のいるリビングに行くとこの帽子を早速被ってもらった。


 「案外似合うな」

 

 この美少女にはなんでも似合うのかもしれないが、それにしても似合う。

 これは髪の色は目立たなくなったが可愛すぎて目立つかもしれない。

 まあそこが目立つのは問題ないか。


 僕はパジャマから外出用の服に着替え財布と携帯をポケットの中にしまい、加奈子の手を握り外に出た。

 やっぱり真夏の外は尋常じゃないくらい暑い。

 しかしもうすぐ夏休みが僕たちを待っている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ