9 異世界講義・ステータスとスキル
セシルさんからダンジョンでの注意点を教えられた後、次に俺はこの世界でのステータスについてを教えられた。
「さてカズキ君、ステータスの項目を見て気になるところは無いかな?」
と、思わせぶりに俺にステータスについての話題を振ってきた。
気になるところ、と言われてもそんなすぐには思いつかない。とりあえず目を閉じてステータスを確認してみる。
【名前:ガゼル 年齢:17 種族:現人神 クラス:奴隷 レベル:1 スキル:翻訳魔法1 経験値:0/200】
「・・・うーん・・・気になるところって言われても、こんなのが見える事自体が気になるというか、おかしいというか・・・。」
「いや、そりゃそうだろうけど・・・そうじゃなくって『ゲーム的』に考えたらそのステータスの表示内容が少ないと思わない?」
そう言われて、『確かに』と頷いた。
ゲームとして考えるのならばステータスの表示にはもう少し、例えば『STR』だとか『ちから』だとかの数値も表示されていてもよさそうだ。しかし、それらは無い。
これじゃ数値化されているのはレベルとスキルだけだ。レベルアップしたとして、例えばレベルが2になっても、ただそれだけで自分がどう強くなったのか全く分からない。
「ステータスなのにほとんど何もわからないって事ですよね。」
「うん、その通り。実はその辺の細かいステータスは普通だと見れないんだよ。数値化されてはいるんだけど、それを見る為のスキルと道具がないと確認は出来ないんだ。」
「て事は、レベルが上がったらなんとなく身体能力も上がるっていう認識なんですか?」
「うーん・・・なんて言ったらいいのか・・・。まぁ、レベルが上がったら強くなる。レベルが高い方が強い。これが一般常識って感じだからそれで大体あってるかな。
一応、冒険者ギルドに細かいステータスを見てくれる人ってのはいるんだけど、その見る人のスキルレベルによっては『力:D』とか大雑把にしかわからない事も多い・・・というかそれがほとんどだから、レベルが同じぐらいだと細かい差はわからない。だから細かいステータスを気にするのはレベルが限界になった人ぐらいかな。」
レベルが限界に達すると経験値が『0/0』と表示されるのだそうだ。
他人のステータスを見る時は木の板等に羊皮紙を貼り付け、それを対象の人物に触れさせて紙へ浮かび上がらせるのが一般的なんだそうだ。
馬車に乗せられる前に額に当てられた木の板の意味がようやく判った。
他にはモノクルや水晶といった物が使われたりするが、モノクルは結構高価で数が少なく所持している者は限られ、水晶は文字が歪んで見難いのであまり使用されないのだそうだ。
「なるほど。レベルが限界ってことはレベル99の人とかが結構いるってことですか?」
「いや、レベルの上限は個人の才能で差が有るんだ。大多数の普通の人達は10から15ぐらいで限界なんだよ。」
「え?そんな低いんですか?」
冒険者っていうからもっとこう・・・レベル90とかで、伝説の何とかみたいな装備であっちこっち暴れまわってるのを想像してたけど、そんな事は無いのか。
ホッとしたようなちょっと残念なような・・・。
「この世界じゃレベル20とか30でかなり強い部類だからね。40にもなればもう立派な英雄の仲間入りだよ。」
「そうなんですか・・・。」
うーん、確かにMMORPGで考えたら低く感じるけど、1人でやるRPGとかのクリアレベルで考えたらそんなもんか。
「とりあえず君はまず、レベルを上げる。それと剣術や体術の訓練をしてスキルを会得する。この二つだね。
レベルが上がれば身体能力は上がるけど、技術は訓練しないと身につかないからね。」
「その、レベルが上がったら身体能力が上がるって言うのがイマイチ分からないんですけど・・・。」
「うーん・・・それはわたしもよく分かってないんだよね。
レベルが上がるにつれて体が引き締まって力も強くなっていって、動体視力なんかも上がっていく。
体がレベルに合わせて強靭になっていくって思ったらいいよ。」
「なんか・・・その・・・怖いんですけど・・・。」
「それはまぁ、わかるけど慣れるしかないかな。」
そもそも常識が違うのだから、とセシルさんは続けた。
こちらに来た当初、彼女は体を鍛えようと腕立て伏せ等の筋トレを行ったそうだが、そんな事をしても無駄だと笑われたのだそうだ。
なんかもう、ホント異世界なんだなぁ・・・。頭がどうにかなりそうなの、これで何度目だっけ?
元の世界の常識はいっその事捨ててしまった方が良いのかもしれない。
「剣術なんかのスキルは実際に体を動かして技術を覚えていくからその辺はあっちと大差はないよ。しっかり訓練してれば、数ヶ月以内には習得できるとは思う。
けど、問題はスキルレベルを2にすることかな。
習得は時間をかけて訓練すれば何とかなるんだけど、スキルレベルを上げるのはとても難しいんだ。
正直、わたしも気がついたら上がってたという感じで、多分訓練だけじゃなく実戦で技術を上げないといけないんじゃないかな?ってぐらいしか上昇条件が分からないんだよね。」
「スキルのレベルって上限あるんですか?」
「上限は多分3かな。今のところ4以上は見たことも聞いた事も無いし。」
予想以上に低い。コレだとスキルレベル2以上ってかなり大変なんじゃ。
「スキルレベル2になってる人って、その道の師範とかやってる人達なんだ。つまり3って言うともうなんていうかアレだね、こっちじゃ神様とか人間国宝とか言われちゃうような達人レベル。」
「なんかもう・・・難しいっていうか、俺なんかじゃ無理じゃないですか?スキルレベル上げるのなんて。」
元の世界じゃ俺は極々平凡な高校生だ。いやまぁ、オタクだし中二病だったりもしたがそれでも何か特別に得意な事なんて何も無いし、部活とかもやってない。
そんな自分が人に何か教えるほど何か技術を磨き高めるというのが全くピンとこない。
「大丈夫だって、君の才能はチートレベルで高いからしっかり訓練して経験を積めば多分レベル3も夢じゃないよ。」
「はぁ・・・。」
ダメだ。たぶん何を言っても今のセシルさんには無駄だろう。
この『才能があるから大丈夫』なんて言われても、そんなのは親から言われてた『お前はやればできる子だから頑張れ』と大差ない、というか同じに聞こえる。
チートレベルで高いなんて言われても、それを確認出来ない俺からしてみれば無いのと同じだ。
言われた事を鵜呑みにしてやる気を出せるほど単純ではないのである。
いやまぁ、頑張るけどさ。死にたくは無いしあの女の子も奴隷の身から助けたい。
けど、セシルさんの言うスキルレベル3とかまでは求めてないというか、そんなレベルに達する前には帰りたいというのが本音だ。
「さてと、いい加減そろそろ寝ようか。明日は装備なんかを整えに市場に行くからね。」
との事で今日の異世界講義はお開きとなった。
余談だが、セシルさんは1人部屋を取っていたので当然ベッドは1つしかなく、俺は薄手のシーツを貰い床で寝る事になった。




