8 レベルと才能とチート
『ダンジョン』
遺跡や洞窟に魔力が集積して出来上がる1種のモンスターとされている。魔力により内部は複雑な異界と化しており、その最上階、または最下層には魔力の中心となる宝石が存在している。それをダンジョンの外へ持ち出すか破壊することによって消滅し元の形へと戻る。消滅の際にダンジョン内に居た場合、入り口に放り出される事になる。
ダンジョン内には魔力によって産出されたモンスターが徘徊しており、奥へ進むほど強く、危険になっていく。また、トラップ等も配置されている事もある。
階層の規模によって3種類に分けられており、最奥が20層までなら小型、40層までを中型、それ以上は大型とされている。大型になるほど、1つ1つの階層が広大になっている。
『モンスター』
ダンジョンの魔力によって産出されるモノと、魔力を取込み変質した獣が居る。後者は『魔獣』とも呼ばれる。
前者は絶命すると魔力が霧散し消滅するが魔獣はそのまま死骸が残る。
どちらからも魔力の核となっている魔石を入手する事が出来き、魔獣からは更に魔力によって変質した毛皮や爪、牙といった素材も手に入れられる。
『魔石』
魔力が蓄積されている石。
溜め込まれている魔力量によって色が5段階で変わり、下から、青、緑、黄、紫、赤、と変化する。
ある程度安定した値段で取引されている為、コレの売買で生計を立てている者も多い。
『魔宝石』
ダンジョンの核。魔石とは比較にならない量の魔力が蓄積されている上、入手が困難な為、非常に高価で取引されている。
・・・・・・と、まぁ以上がわたし、セシルがカズキ君に説明した内容だ。
だいぶ内容を省略してはいるけど、基本知識はこれぐらいで十分だと思う。
基本知識の後、本命のとてもとても重要なダンジョンでの行動について彼に言った注意すべき要点は、3つ。
トラップ回避の為に先行しないように『わたしより先に進まない』
戦闘はまだまだ出来ないだろうから戦闘には参加しないように『わたしの指示無しに戦闘は行わない。参加しない』
離れすぎると守れないので出来るだけわたしの近くにいるように『わたしから離れすぎない』
とりあえず、これでうっかり死なせたりはしないはず。
まだレベル1の彼だと、本当にちょっとしたうっかりで死にかねない。ホントしっかり気をつけないと。
わたしはレベルも高く、小型ダンジョンぐらいならソロでも大丈夫だ。
以前に一度、恩人で師匠でもある先代セシルさんが、まだ弱かったわたしを連れて小型ダンジョンの撃破攻略をほぼ1人で行った事があった。
その時に見た師匠の戦う姿にわたしは惹かれ、憧れ、いつか自分も同じ様にと思った。
彼にも、わたしがカッコよく戦うところ見て、自分と同じ様に憧れ、強い冒険者を目指すようになって貰いたい。
今は人が殺されるところを見たせいか、どうも臆病になっているように思えるけど、彼も男の子だし英雄願望はあるはず、きっと。
幸い、わたしという話相手が出来たからか、出会ってすぐよりは少し落ち着いてきてる。数時間でこれならそう時間をかけず、しっかり前を向いて進めるようになるはずだ。
もしかしたらいつか帰ってしまうかもしれないけど、それでも出来るなら目標達成までは、わたしのパートナーとして、パーティを組んで欲しい。
いや正直なところを言ってしまえば、元の世界へ帰らず共に冒険者としてこの世界で生きていくことを選択してくれないかと考えてしまってる。
わたしが何故こんなにも彼に固執しているのかというと、それは彼の才能値がありえないほど高いからだ。
『才能値』とはレベルアップやスキル習得など様々なものに関係する隠しステータス(特殊なスキルが無ければ判らない数値なので一般的には知られていないステータス)で、高ければ高いほど良い。
才能値が高いと取得経験値も少し多く得られるし、スキルの習得も早い。と言ってもその差は微々たるもので、それ程重要じゃない。
才能値が関係するステータスで重要なのは『レベルの上限』だ。
モンスターと戦ったりする事等で得られる経験値を貯めればレベルが上がり、身体能力が上がる。
だけど、上げれるレベルには上限があり、そのレベルの上限は才能値によって差が出るのが、この世界での法則。
才能値1が最低で2、3と数値が上がるほど限界レベルも上がる。
1~2がほとんどの人、限界レベルは10前後
3~4がたまにいる凄い人、限界レベルは20~30前後
5~6が稀にいる伝説級の凄い人、限界レベル40~60ぐらい(人数が少ないのでハッキリ判らない)
7以上はもう化物、チートキャラ、限界レベル不明
といった感じだろうか。
わたしが見た事のある中では、共和国の『最強の戦士』が才能値6でレベル64がこの世界最高だった。
だと言うのに彼は、カズキ君は『才能値10』だ。
ハッキリ言って異常で、この世界の住人じゃありえない数値。そんな逸材の彼を手放す理由は無い。
とは言え現在のレベル1でほぼ何のスキルも無い状態じゃ才能値が1でも10でも同じだ。
そこは、わたしがビシビシ鍛え、立派な冒険者として成長してもらわなくては。
◇
5年前・・・わたしがこの世界に来て初めて見たものは死体だった。
苔生した壁を松明が辛うじて照らしているだけの薄暗い場所で、土と泥と、何か判らない獣の臭い、そして鉄とそれが錆びた様な血の臭い。
そんな所で、複数の死体と共に地面で横になっている状態がわたしのこの世界のスタート地点だった。
今思い出しても、あまりにもあんまりなスタートだ。
最初はハッキリしない意識も次第にクリアになり、目の前の死体を認識して飛び起き、混乱する自身を落ち着かせようと周りを確認し、さらに混乱した。
身に着けている物にも違和感を覚え、地面に転がった松明の明りを頼りにわたしは自身を確認する。
すると見慣れない服を着て、具足を着け、いかにもファンタジーな冒険者と言った格好になっていて、混乱はさらに助長された。
しばらくして、目を閉じると瞼の裏に白い文字が浮かびあがるのに気付く。
『ボーナスポイントがあります』
などと出ており、自身の周りで起き続ける非日常的な出来事の連続に本気で気が狂いそうだった。
結局その時はモンスターが現れて、それから必死になって逃げる破目になり、逃げ切った後は現状を冷静に受け止められていた。・・・いやまぁ、今思えば冷静っていうよりヤケになってただけか・・・・・・。
その後も大変だったのは言うまでも無い。
なにせいきなりダンジョンからのスタート。装備品は何故か軒並みボロボロで半壊。ベルトで剣の鞘は着けられてるのに肝心の中身は無し。
しかも、後でわかった事だけど、その時わたしが居たのは中型ダンジョンのかなり奥の方だった。
ダンジョンの討伐攻略に来ていた、先代セシルさんのパーティに助けられなければ間違いなく命はなかっただろう。
最初は当然置いてかれそうになって、必死にしがみついて何とか同行の許しを得たんだった。
そうやって何とか一応の安全を確保できたわたしは目を閉じ『ボーナスポイントがあります』の表示と向き合う事になる。
無視を続けてたが、『ステータス』の表示と違って、目を閉じると必ず浮かび上がってくるので、寝ようとした時に放置できなくなったからだ。
『ボーナスポント』はポイントを消費してステータスを強化したりスキルを得る事が出来る、といったRPGゲームなんかで見られるシステムだった。
ただ、1度使ってしまうと戻す事は出来ない。後々ポイントを得る事も無い。
この時、わたしは『ゲームのスキルポントみたいなもんかな。じゃあ、レベル上げとかしたらまた貰えるのかな?とりあえず便利そうな『分析』と、言葉わからないから『翻訳』、あとは・・・あ、『経験値ボーナス』ある。じゃ、コレと・・・『取得経験値ペナルティ解除』?経験値取得にペナルティなんかあるの?うーん・・・コレもとっておこう。
あとは・・・・・・なんかもうメンドくさい、とりあえずこの『才能値』っていうのに残りポイント全部振っておこう。ゲームとして考えたら、名前的にステータスの上昇値とかに関係ありそうだしレベル低いうちに高くしといたほうがよさそうだし。他のスキルはまたポイント貯まってからじっくり考えて選ぼう。』
なんて感じでボーナスポイントを消費した。いや、実際はもっと真剣に考えてたけど、大体こんな感じだった。
後でポイントが貰えないのを知って後悔したのは言うまでも無い。
なぜ『ボーナスポイント』をわたしが持っていたのかは結局今でも判っていない。この時に得たスキルはどれも珍しいものばかりだった。
『分析』は他者のステータスやアイテムの効果などを見れ、本人も見る事の出来ない隠しステータスまで見る事が出来るチートスキル。
『経験値ボーナス』は得られる経験値が2倍になるチートスキル。
『取得経験値ペナルティ解除』は、パーティを組んだ時、その人数分減ってしまう経験値の減少を無くし、さらにパーティメンバーのレベルに差があると人数分に加えて更に減少、下手すると全く得られないのだけど、それすら無くしてしまうチートスキル。
『翻訳』あらゆる言語を翻訳できるスキル。珍しい。
そして残りポイント全てを費やした『才能値』は12と、わたしは立派なチートキャラになっていた。




