表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

 歩き始めた直孝の足に、突然振動が伝わった。制服のズボンの右ポケットに入れている携帯のバイブレーターである。

 直孝はポケットに手を突っ込み、中から携帯を取り出した。外側のサブディスプレイを見ると、≪メール着信一件≫と表示されている。

 開閉式の携帯を開き、メインディスプレイを露出させる。携帯を操作し、着信メールボックスを開いた直孝は、見慣れないメールアドレスに首をひねった。だがその件名から、そのメールがどこから来たかを理解する。

≪テラーズ・スティア全国大会のお知らせ≫

 直孝は、テラーズ・スティアの携帯サイトにも登録している。普通、アーケードゲームの携帯サイトというのは、月額料金が発生する。

しかしこのゲームの携帯サイトはどういうわけか完全無料である。パケット代はもちろんかかるが、それにしてもプレイ料金は安く、こんなサービスまで行っていて利益が出るのだろうか?

そんな疑問を抱きながらも直孝はメールを開き、内容を確認した。

≪日頃、テラーズ・スティアをプレイしていただき、真にありがとうございます。近日開かれるテラーズ・スティアの全国大会の出場選手候補の方に、メールをお送りしております。パイロットネーム≪インシュヴァルツ≫様は、そのランキングにより、全国大会出場の権利を手にしておられるため、招待メールを送らせていただきました。大会に参加される場合は、下記のURLより参加申込をなさるよう、お願いいたします≫

 メールの下の方にはメールの内容通り参加申込のページへと飛ぶのであろうリンクが貼り付けてあった。

 全国大会。そんな大会が開かれるのは、このテラーズ・スティアというゲームが世に出てから初めてのことである。

 逆に言えば、これだけの人気を誇っているにもかかわらず全国の頂点を決めるイベントを行わないゲームというのは珍しかった。ユーザーからの要望が多くて開催することになったのか、運営が自分たちで開催すると決めたのかは分からないが。

 どのようなものかは分からないが、ランキングで出場選手を決めるなら、全国でも腕のいいプレイヤーばかりが集まるのだろう。

 中にはそのプレイ回数故にランキング上位にいるだけの下手なプレイヤーもいるが、全国百位以内のランカーたちは、ほとんど皆実力ある強敵である。

 開催場所は直孝が住んでいるこの国、彩櫻国の首都櫻都の中、海に面したとあるイベント会場とある。櫻都に住んでいる直孝にとっては別に遠くも無く、簡単に行ける場所であるし、さらに上位入賞者には豪華プレゼントとあっては、興味がそそられるのも仕方ない。

 考えられるとすれば、限定機体や、武装など。

 コアなゲームプレイヤーなんてものは限定と名の付くものに弱い。直孝とて例外ではなかった。そんな全国で限られたプレイヤーしか手に入れることのできない機体や武装があるのだとしたら、何としてでも手に入れたい。

 そう長くは考えなかった。直孝の指は、滑るようにボタンを操作し、リンクを押すと参加受付サイトに飛んでいた。

 ICカードに印字されている番号を打ち込むと、パイロットネームの欄にインシュヴァルツと表示される。次に、メールに書いてあった暗証番号を打ち込み、自分に大会の参加権利があることを示す。

 最後に、≪参加しますか≫と書かれている場所に、YesとNoのボタンが現れる。

 直孝は迷わずYesを押した。

 直後、直孝の携帯にもう一度メールが届く。大会に出場することが決まったという確認メールだ。同時に大会当日、出場者であることの証明にもなってくれるようだが。

 全国大会の日時は来週の土曜日に開催されるらしい。どうにも急な話だと思うが、コアなプレイヤーならそれでも予定を合わせるのだろう。仕事が入っている人間は有給でも何でも取って。

 高校生である直孝は、土曜日は問答無用で学校は休み。部活にも入っていないし、彼女もいない身とあっては、休みの日にどこかに行くわけでもない。どうせバイトで貯めた金でゲームをしているだけである。

 大会ではプレイ料金は発生せず、参加料も必要無いということだから、生活費を気にする必要も無い。

 やるからには優勝を目指すが、負けたところでペナルティがあるわけでもない。

 自分のアパートが見えてきて、直孝は携帯を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ