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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
【ロスト・ワールド】への挑戦!
95/198

擬態

 知里夫の瞳が輝いた。


「面白え!」


 叫ぶと、反対側の住宅に飛び蹴りを食らわす。


 ばたん、ばた、ばたばたばたっ!


 反対側も、まったく同じように呆気なく倒れていく。

 あっという間に、辺りは倒れこんだ住宅の書き割りで埋まった。


 二郎はナイフを手にとった。

 空を見上げ、腕を引いて全身の力を込め、真っ直ぐ上へと投げ上げる。二郎の投げ上げたナイフは、ロケットが上昇するがごとく、ずんずんと高度を上げていく。


 と、ナイフの先端がぷすり、と何かに突き刺さった。


 びりびりびりっ!


 ナイフは空を、布地のように切り裂いていく!

 瞬く間に、空中に一つの切れ目ができていく。切れ目からは、毒々しい真っ赤な空に、どんよりと漂うグリーンの雲が覗いた。


 ぎええええっ!


 どこかで苦悶そのものといった、怖ろしい悲鳴が上がった。


 ぴょこん、とそれまで地面に倒れこんでいた書き割りが一斉に立ち上がる。

 ざあああっ! と、書き割りは空中に飛び上がり、猛烈な風を巻き起こした。飛び上がると、くるくると空中で旋回し、蚊柱のように一本の竜巻となって浮かぶ。


 一方、切り裂かれた空は、さらに切れ目を広げながら、地平線の彼方に消えていく。後には、厭らしい真っ赤な空と、腐ったような緑色の雲が残るだけ。


「い、今のは……何っ?」


 ようやく、タバサは息を吐き出し、言葉を押し出した。驚愕に、全身がこちん、こちんに固まっている。


「擬態だ。現実世界の町そっくりに擬態し、プレイヤーという獲物を待ち受けていたんだ。あのまま君がぼけーっ、と家に足を踏み入れていたら、ぱくっと一飲みにされていたはずだぜ!」


 二郎は「ふっ」と指先で額の汗を拭った。

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