鳩
玄之丞と一緒に瓦礫の山を探していたタバサは、建物の破片の間から大きなドタ靴が二つ、空を向いているのに気付く。
玄之丞の袖を引っ張り、指さした。
「玄之丞さん、あれ!」
「おお! 晴彦の靴に違いない!」
玄之丞は大きく目を見開き、同意した。
「タバサさん、手伝ってくれんかな?」
片方の足を持ち上げ、玄之丞はタバサに声を掛けた。
タバサは頷き、もう片方の足を両手で掴む。
「では、引っこ抜くぞ! せえの!」
気を揃え、二人は全身の力を込め、晴彦の両足を引っ張った!
ずるずると晴彦の身体が破片の中から引き出される。晴彦はタバサの顔を見上げ、目をぱちくりとさせた。
「大丈夫か?」
玄之丞は心配そうに声を掛けるが、晴彦はぴょんと真っ直ぐに身体を突っ張らせたまま立ち上がる。ぴょん、ぴょんと元気に飛び跳ねて見せた。
ぽっぽー!
鳩鳴き時計の音がして、ぴょんと晴彦の口の中から鳩が飛び出す。慌てて晴彦は自分の口を両手で押さえる。
ぽっぽー!
今度は両耳から鳩が飛び出す。
晴彦は両耳を押さえる。
すると口から、口を押さえると耳から。晴彦の顔が真赤に染まり、口と耳を交互に押さえる動作が繰り返された。
「いい加減にしろ!」
ぽかり、と玄之丞が晴彦の頭を殴りつけた。
鳩は飛び出さなくなった。
晴彦は、ほっと安堵の溜息をついて、にこにこと笑みを浮かべた。
「それじゃ、行くぞ!」
騒ぎにまるで動じる気配もなく、二郎は歩き出す。