瓦礫
がらがらと瓦礫の中からタバサは身体を引っこ抜き、ぺっぺと口に入った砂利を吐き出して、文句を垂れる。
「もう! なんで、まともにエレベーターは上がったり、下がったりできないのよっ!」
玄之丞の事務所からエレベーターに乗って降りようとして、今度は下ではなく、横にエレベーターは吹っ飛んだのである。
エレベーターはホテルの壁を突き抜け、道路の反対側の建物に突っ込んだ。
後から二郎も這い出し、慰めるように声を掛けてきた。
「あの回転ドアを、もう一度、潜ることを考えたら、まだマシじゃないか!」
二郎の後からゲルダ少佐も不機嫌な顔つきで這い出す。
ゲルダの不機嫌な表情は、【スラップ・スティック・タウン】に到着してから、まるで貼りついたように変わらない。
二郎の言葉に、ゲルダは「まったく」と短く感想を述べて、服の破れ綻びがないか丁寧に確認している。
「知里夫、晴彦! 無事かね?」
埃で真っ白になった玄之丞が、それでもしっかりと口に葉巻を咥えつつ這い出した。
ぼこり、と瓦礫の山が動き、知里夫が顔を突き出す。「ふーっ」と大きく息を吐き出し、それでも慣れているのか、平気な顔で立ち上がる。
しばらく、ぱたぱたと、皆の服の埃を払う音が続いた。
玄之丞は辺りを、きょろきょろと見回した。
「おい、晴彦はどうした?」
知里夫は肩を竦める。
「知らねえ……どっか、その辺に埋もれているんじゃないのか?」