ハープ
タバサは驚き、思わず身を引いた。
「な、何?」
相変わらず笑みを浮かべつつ、晴彦はコートから巨大なハープを引っ張り出した。
タバサはびっくりした。こんなもの、どこにどうやって隠していたんだろう……。
ああ、そうか! ここは仮想現実だった!
きっと晴彦のコートは○○えもんのN次元ポケットと同じなんだ。
ハープを前に、晴彦は気取った仕草で両手を構える。
ぽろろろん……。
晴彦の指が、ハープの弦を掻き鳴らす。意外と晴彦の腕前はプロはだしで、本格的だった。
しばらく晴彦のハープの演奏が続き、ついタバサは、うっとりと聞き惚れてしまう。
晴彦のコンサートが終了し、タバサは思わずぱちぱちと拍手する。晴彦は深々とお辞儀をして、ハープを元通りコートに納めた。
「へっ!」と知里夫は笑う。
にやにや笑いを浮かべ、玄之丞は口を開く。
「こう見えても、知里夫はピアノの名手でね。晴彦のハープと、いい勝負をするよ」
「へえ……」と感心したタバサは、知里夫に声を掛けた。
「ねえ、知里夫さんも、なんかやってよ!」
知里夫はそっぽを向き、気取った口調で返事する。
「後でな。天才は忘れた頃にやってくる……ってね!」
玄之丞は立ち上がった。
「それでは、これより【ロスト・ワールド】に向かうとするか!」
二郎も立ち上がった。
「いよいよ、シャドウと対決だな! 気を緩めるなよ」
二郎の言葉に玄之丞は眉を上げて返事した。
「それとも吾輩がカモである、かもな。やれ行けや、カモが飛び込むネギ畑。向こうで、けだもの組合でも始めるか!」
訳の判らないことを呟いて、事務所のドアを開いた。