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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
不条理三兄弟
79/198

ウサギ

 エレベーターのドアは、すぐに開く。


「いらっしゃいませ! 何階をご利用ですか?」


 エレベーター・ボーイのお仕着せを身につけたウサギが陽気な口調で声を掛けてきた。片手にニンジンを持って、時々かりかりと齧っている。

 息を詰め、二郎が中に踏み込む。タバサと少佐も後に続いた。

 タバサはしげしげとウサギを見つめた。

 マンガの登場人物のような格好をしている。きょろりとした大きな両目に、笑い顔を貼り付かせたような顔つきである。

 ウサギはタバサの視線を感じ、ウインクしてきた。


 馴れ馴れしいウサギの態度に、タバサは「むっ」となって顔を背ける。


「最上階だ」


 二郎の言葉にウサギは「かしこまりました!」と大声で返事をして、エレベーターの操作レバーをぐいっと引いた。


「きゃあっ!」


 出し抜けにエレベーターはロケットのように上昇する。物凄い加速で、全員の身体がぺっしゃんこに縮んでしまう。


 がくんっ! とエレベーターは急停止する。

 ぴしゃんっ、と急停止した反動で全員はエレベーターの天井にぶつかってしまう。

 からからから……と皿が回転するような音を立て、ぺったんこの全員は床に転がる。


「最上階です……」


 ウサギの声がする。ぺったんこのウサギから、大きな両耳がぴょこんと出ている。

 ドアが開き、皿のように平べったくなった二郎は、にゅっと足を外に出して、のこのこと歩き出す。


「もう……やんなっちゃう……」


 タバサの呟きに、二郎はもごもごとくぐもったような返事を返した。


「我慢しろ。この前こいつに乗ったときは、天井を突き抜け、道路の向かいのビルに突き刺さった。今回は、まともに止まっただけ、めっけものさ!」

「むん!」と二郎は力む。ぴょこり、と二郎の身体が元に戻った。


 タバサ、ゲルダも、同じように力んだ。

 ぱこん、ぺこん……とブリキ缶のような甲高い音とともに、二人の姿は元に戻る。


「はあっ」とタバサは息を吐き出した。

 二郎が目の前のドアを指差した。


「ここだよ」

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