エレベーター
無表情な二郎の顔を見て、タバサとゲルダは顔を見合わせた。
ゲルダはぐいっ、と眉を上げた。
せえのっ、と二人で呼吸を合わせ、回転ドアに突進する。
「わああああっ!」
「きゃあああっ!」
案の定、二人は猛スピードで回転するドアに捕まってしまった!
ドアのロビーと、外の道路が滲んだようにちらと視界に映り、唐突に二人はドアから弾き出される。べっちゃりと、床に腹這いになったタバサは、隣のゲルダ少佐を見た。ゲルダ少佐は不機嫌な表情で立ち上がり、ぱんぱんと音を立てて服の埃を払っている。
ふらふらになって立ち上がったタバサは、二郎に噛みついた。
「何なのよう! この〝世界〟はっ! ドアさえ、まともに開かないの?」
二郎は「へっ」と肩を竦める。
「仕方ない。これが【スラップ・スティック・タウン】の約束事でね。ここに入ったら最後、マンガの登場人物のような出来事に出会うことを覚悟しなくてはならない。ま、これが好きで集まっているプレイヤーもいるから、成立しているんだが」
二郎の視線は、ロビーのエレベーターのドアに向けられている。
「これから最上階に出向かなければならないんだが、さて、どうしたものか?」
タバサも疑い深く、エレベーターのドアを睨んだ。
回転ドアがあの調子じゃ、エレベーターに乗ったら、どんな酷い目に遭わされるか、判ったもんじゃない!
「まあ、階段をえっちらおっちら上ることを考えると、他に手段はないしな……」
諦めたように呟くと、二郎はエレベーターの呼び出しボタンを押した。




