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スイング・ドア
なんとか渡り終えたタバサは、大きく溜息をついた。
【ココナッツ・ホテル】の正面は、回転ドアだった。なぜか二郎は、回転ドアの前で考え込んでいる。
「入らないの?」とタバサが声を掛けると、二郎は無言で頷く。
「ま、度胸試しと行くか!」
なにを大袈裟な……。たかが回転ドアを潜るだけのことに、とタバサは思ったが、二郎の様子は真剣だった。
さっと二郎は回転ドアを押して、中へ入る。
と、ぐるんっと大きくドアが回転して、物凄いスピードで回り始める。
「わあああああっ!」
二郎はフード・プロセッサーに巻き込まれたように、猛スピードで回転するドアに挟まれている。ぎゅーんっ、と回転するドアに捕まったまま、二郎の身体が霞む。
ぽんっ、と弾けるような音とともに、二郎の身体が勢いよくホテル内部のロビーに投げ出された。
ぜいぜいぜいっ、と二郎は床にべったり腹這いになって喘いでいた。ゆっくりと立ち上がり、ドアの向こうからタバサを見る。
「何している? ドアを抜けて来い!」




