〝世界〟
駅舎から〝門〟をくぐると【大中央駅】である。【大中央駅】には、いつものように無数のプレイヤーが、思い思いのコスチュームを纏い、銘々の目的地を目指して早足に行き交っている。
「こっちだ」
すでに目当ての場所を目指し、二郎は大股に歩き出した。タバサと少佐は慌てて後を追う。
目の前に聳える〝門〟を見上げ、少佐は驚きの声を上げた。少佐の声には、明らかに疑いの響きがあった。
「二郎さん、本当に、この〝世界〟でいいのですか?」
タバサはそっと少佐に近寄り、質問する。
「何か問題でもあるの?」
少佐の表情は苦々しい。少佐の視線を追って、タバサも〝門〟を見上げる。
毒々しい、といっていいほどの色の氾濫であった。黄色、青、赤の三原色がペンキでぶちまけられたように塗りたくられた〝門〟には、犬、猫、その他色々な動物のキャラクターが嵌めこまれている。
どのキャラクターも、大幅なデフォルメが施され、陽気そうな笑いを浮かべている。まるで遊園地の入口に見える。
「ここは何ていう〝世界〟なの?」
タバサの質問に、少佐はさも厭そうに答える。
「【スラップ・スティック・タウン】! 又の名を【ドタバタ・ワールド】という。──(差別用語で発音できない)の町だ!」
少佐の口調は、吐き捨てるようだった。