プレイヤー
タバサは内心、首を傾げていた。
二郎と知り合ってまだ、二日にしかならないが、知れば知るほど判らなくなる。
軽薄そうでいて、実は慎重だし、大胆でもある。残酷であっても、奇妙に人懐こい。何だか無数の人格が同居しているようである。
列車の速度が落ちてきた。
【蒸汽帝国】の〝門〟が、ある駅舎に近づいたのである。
窓外に、駅舎のホームが見えてきた。ホームの端に駅員が汽車を迎えて立っている。駅員は機関士と手を振り、挨拶をする。
駅員を見ながら「駅員はNPCなの?」とタバサは呟く。
二郎は首を振った。
「違う。本物のプレイヤーだ。言っていなかったかな? 【蒸汽帝国】は鉄道マニアが参加している、という事実を」
タバサは、あんぐりと口を開ける。
「それじゃあ……」
二郎は、にやりと笑い返す。
「そうさ、駅員も機関士も、好きこのんで役目を果たしているんだよ。おそらく【蒸汽帝国】の鉄道員の競争率は、驚くほど高いのじゃないのかな?」
客車からホームに降り立つと、タバサは本来のコスチュームに変化した。十九世紀のドレスから、肌も顕わな動きやすい服装になる。
タバサは、ほっと溜息をついた。
【蒸汽帝国】で支給されるコスチュームは確かに優雅で、女らしいものだ。でも、やっぱり、このほうが自分らしいと思う。
二郎も初めて出会ったときの姿になる。全く変わらないのは、ゲルダ少佐だけだ。