仲間
轟々と、蒸気機関車は力強いラッセル音を立てながら鉄路を走る。客車にはタバサ、二郎、ゲルダ少佐が個室に向かい合っていた。少佐は、堪りかねたように口を開いた。
「いい加減、教えてくれてもいいでしょう? いったい、どういう道筋で【ロスト・ワールド】に向かうつもりなのです?」
それまで窓外に目をやっていた二郎は、ゲルダ少佐に顔を向けた。いつもの軽薄な調子は影を潜め、表情は固い。
「【ロスト・ワールド】は様々な〝世界〟に入口を開け、罠を仕掛けていることは知っているな?」
二郎の変貌に気押され、ゲルダは言葉もなく頷いた。
「それらの罠から【ロスト・ワールド】へと向かうつもりだ。【蒸汽帝国】に空けられた〝門〟は中心部に直行するが、それだけ無数の罠が仕掛けられていると見ていいだろう。それより、何度も潜入したおれにとっては、馴染みのある道筋のほうが安全度は高い。それに、仲間を募らなくてはならないからな」
少佐は眉を寄せた。
「仲間とは、どのような? 何か、特殊な技能を持っているのですか?」
二郎は初めて笑いを見せた。
「そう……だな。確かに、特殊な技能といっていいだろう。何しろ【ロスト・ワールド】は危険な場所だ。いや! むしろ不条理といっていい。そんな場所に向かうのなら、こちらも不条理な連中を従える必要がある」
二郎の言葉は謎めいていた。