真実
会議が散会になると、首相は二郎とタバサに、そっと話し掛けた。
「ちょっと内密の話がある……」
二郎はタークを見つめ、目を細める。
「何だね?」
「エミリー皇女のことについてだ」
タークの目は、真剣だった。
「来てくれないか? あんたらに、皇女の秘密を明かしたい」
二郎は「どうする?」とタバサを見た。表情に躊躇いが浮かんでいる。
タークは懇願するような口調になった。
「頼む! どうあっても、聞いてもらいたい」
必死に掻き口説くタークの勢いに、二郎とタバサは王宮を案内された。
タークが二人を案内した先は、王宮の奥深くの、薄暗い廊下を延々と歩かされた一角であった。タークは懐からごつい、古びた鍵束を取り出し、ドアの鍵穴に差した。がちゃがちゃと音を立て、鍵が開けられる。
素早く周りを見て、誰もいないことを確認すると、タークは素早く二郎とタバサを押し込むようにして部屋へと入る。
背後でタークが再び施錠する音が響き、タバサは部屋の中を見渡した。
「何なの……」と、呆然と呟く。
しゅーっ、しゅーっという単調な音が響いている。部屋の中には医療用のベッドが占領しており、一人の患者が横たわっている。
少女らしい……とはいえ、痩せこけ、ほとんど肉のない手足は骨格が浮き出ていて、まるで骸骨だ。
少女の顔にはマスクが装着され、枯れ枝のような手足には至るところ、医療用のチューブが無数に繋がれている。
ベッドの横には巨大な医療用の器械──人工心肺だろう──が先ほどの単調な音を繰り返している。
「誰? この娘」
「エミリー皇女だ。これが皇女の、真の姿だよ」