ゲルダ少佐
出口から駆けつけた指揮官は、唇を噛み締め、ターク首相に報告する。撥ね上げた面覆いの下の顔は、緊張で蒼白に強張っている。
「申し訳ありません! こちらの武器は、全く効果ありませんでした。もっと強力な武器があれば、と思われるのですが、エミリー皇女さまが囚われている限り、どうしようもなく」
タークは憎々しげに指揮官を睨みつける。
「ええい! 弁解無用! お前の名前は?」
さっと指揮官は敬礼して、踵を打ち合わせた。
「帝国軍第一連隊指揮官、ゲルダ少佐であります!」
「よし、ゲルダ少佐。今からエミリー皇女救出のための部隊を編成せよ! あそこに見える【ロスト・ワールド】の〝門〟に突入し、万難を排して、シャドウの手から皇女を救出する! いいか、もう言い訳は許さんからな!」
首相の命令は、却ってゲルダ少佐の顔に希望を昇らせた。かっと頬に赤みが差し、背筋が、ぴん、と伸びた。
「承知致しました! すぐに全連隊を召集し、精鋭を選抜して救出隊を編成致します。時間は掛かりません」
二郎が割り込む。
「そいつぁ、止めたほうがいい……」
わざとだろうが、二郎の口調は至極のんびりとしたものだった。首相はぎくりと二郎を睨みつけた。