激突!
「あんたって!」
タバサは憤然となった。
「さっきの話じゃ、あんたに責任があるんでしょ? それなのに、尻尾を巻いてすたこらさっさと逃げ出すつもり?」
二郎は恬淡と頷く。
「当たり前さ! こちとら、十年も掛けて【ロスト・ワールド】攻略の秘策を練っているんだ。向こうがのこのこ、こっちへ出向いてきた今こそ、おれの秘策を使うチャンスなんだ。しかし、ここじゃない。おれのチャンスは、別の場所にある。まあ、【蒸汽帝国】の軍隊がどう戦うか、お手並み拝見といこうや」
二人の話を聞きつけたのか、タークが険しい表情になって二郎に詰問する。
「お前! この前の、王宮に忍び込んできた電脳盗賊だな! これは、お前の策略か? あやつとお前、どう関係があるのだ?」
二郎は、うんざりした表情になる。
「だから、忠告したじゃないか。公演を中止したほうがいいと。第一──」
二郎の言葉が終わらぬうち、軍隊と巨大化したシャドウの間に激突が起こった。
エミリーを握りしめたまま、シャドウは大股で武器を構える軍隊の中に踊り込んだ。爪先で、滅茶苦茶に蹴り上げる。兵士はエミリーに当たらないよう、蒸汽砲を狙わなくてはならず、形勢は圧倒的に不利であった。
二郎はシャドウの背後に渦巻く【ロスト・ワールド】の〝門〟を見て叫ぶ。
「逃げろっ! こりゃ、愚図愚図していられないぞ!」




