入口
ぐいぐいと力強く、二郎はタバサを引っ張り歩いていく。タバサは二郎の勢いに圧倒され、ついつい従ってしまう。
二郎は、そのまま劇場の裏手へと回った。
裏手にはごたごたと太いの、細いの様々なダクトや、パイプがのたうつように劇場の壁を占領している。歩道のマンホールからは、溢れた蒸汽が濛々と立ち込め、まるで俄かに霧が出現したかのようだった。
ぽん、と二郎のポケットから金属の球体が飛び出した。二郎の相棒であるティンカーである。二郎は陽気にティンカーに命令する。
「ティンカー! 入口を頼む!」
「了解!」
ティンカーは短く応えると、ダクトの隙間の壁に近寄った。針のようなものが、ティンカーの表面から飛び出した。針を壁にくっつけ、素早く長方形の形を作る。
と、煉瓦の壁に、きらきらと長方形のラインが走り、ドアの形に変化する。
「二郎さま。できました!」
「ご苦労」と二郎は頷き、ドアのノブを掴む。
呆気に取られているタバサに、顎をしゃくった。
「さあ、中へ入るぞ!」
がちゃり、と音を立てドアが開く。
ドアの向こうは廊下であった。
二郎はさっさと中へ入り込む。中からタバサを見て、眉を上げた。
「どうした? 入らないのか?」