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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
衝撃!【ロスト・ワールド】の侵略
42/198

伍長

「大丈夫だったら!」

 エミリーは黙り込んだタークの背中を気安く叩いた。


 その時、部屋のドアが、どんどんと勢いよく叩かれた。


「どなた?」とエミリーが声を掛けると、ドアの向こうから喚くような一本調子の声が応える。


「帝国軍第一連隊所属伝令の、バルク伍長であります! ご報告にまいりました!」

「お入りになって」


 エミリーの声に「はっ! 失礼します!」と返答があり、ドアが叩きつけられるように開かれた。ドアの向こうには、頬を真っ赤に染めた陸軍下士官がしゃっちこばって立っている。直立不動のまま、さっと敬礼をすると、叫ぶように報告をする。


「わが帝国第一連隊は、本日完全に配備を完了! 水も漏らさぬ態勢で、国立蒸汽劇場の警備に着いております! どうかエミリー皇女さまにあられましては、全幅の信頼を置かれたいと、連隊長のお言葉であります!」


 こちこちに緊張している伍長は、声の加減ができず、あらん限りの声を張り上げる。


 首相のタークは、思わず両耳を手で塞いでいた。やっと伍長が報告を終えたので、タークは叱り付けた。

「伍長! ここは演習場の野っ原ではないのだぞ! もう少し、声を抑えるとか、考えろ。鼓膜が破れる!」

「はっ! 申し訳ありません!」

 詫びる伍長の言葉は、さらに大声になった。窓ガラスがビリビリと震動する。


 エミリーは気の毒そうな表情になると、優しい笑顔を伍長に向けた。

「まあ、伍長さん。気にすることないのよ。わたくしが感謝していた、と連隊長さんに伝えて下さいな」

 エミリーの言葉に伍長は感激して、もう一度、口を開きそうになった。だが、タークが睨みつけると慌てて口を噤み、さっと敬礼をして回れ右をして退出した。


 伍長の背中を見送り、エミリーはタークに顔を向けた。

「さあ、そろそろ開演の時間よ! 遅れると、お客さまに悪いわ。まいりましょう!」

「はあ」と生返事をして、タークは重い腰を上げた。

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