表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
現実の味
40/198

決意

 ベンチに座り込み、買い物の弁当を広げ、ぼんやりと夕日を眺めながら食べはじめる。


 美味しい……。


 たとえ大量生産の、無人工場で作られた弁当であっても、本物の素材、本物の食べ物は、洋子の空腹を満たしてくれる。


 夕日が空を染め上げる。


 廃墟のような街の景観はシルエットとなって夕空に沈み、醜い細部は影になって見えなくなる。それが仮想空間で見た、景色と重なる。

 洋子は食べ終えた弁当と飲み物の容器をまとめ、屑篭に投げ入れた。容器は、ほんの少しの亀裂でも自然分解する素材でできているから、数日中には跡形もなく土に溶け込むだろう。


 客家二郎のことを考える。あの名前は、本名なのだろうか?


 ほとんどの仮想現実で過ごす分身は、外国風の名前を名乗っているのが普通だそうだ。だから洋子は、分身にタバサという名前を与えた。


 二郎……。どう考えても、日本人の名前である。仮想現実接続装置には、自動翻訳機能がついているから、日本人であるという確証はないが。


【ロスト・ワールド】に挑もうとしている、あの客家二郎を考えるうち、洋子の胸にも新たな決意が育っていた。


 そうだ、あたしも何か挑戦できるものを見つけよう。それが何か、今は皆目、見当もつかない。でも、二郎と知り合ったことが、きっかけとなるかもしれない。

〝ロスト〟は確かに脅威だが、ただ怖がったとしても、意味がない。第一、死ぬわけじゃないのだ。単に三日分の記憶が失われるだけじゃないか……。


 ベンチから立ち上がり、洋子は家に帰る道筋を辿った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ