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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
現実の味
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犯罪事情

 犯罪の理由は色々と考えられるが、ざっくりと断定してしまうと、それは不足から生じる。


 人は財力の不足から金を盗み、愛情の不足から、強姦事件を起こす。


 しかし、仮想現実接続装置を所有してしまうと、それら諸々の不足は、完全に充足してしまう。

 大金持ちの暮らしを体験したければ、それらのデータを仮想現実で入手すればいい。僅か四畳半の部屋に暮らしていても、仮想現実では城のような豪邸に住まうことができる。


 現実世界では誰にも見向きもされない人間でも、仮想現実の夢のような美しさを誇る、男女のNPCが本物の愛情を持って接してくれる。


 事故すら、ニュースにならない。なにしろ、自動車を現実世界で運転する人間が存在しないのだ。それでは、物流はどうするのだと疑問が起こるだろうが、問題は一切ない。

 仮想現実から接続して、無人の車両や航空機、船舶を操縦するのが一般的だ。だから現実の人間が乗り組むこともなく、事故が発生しても、死亡事件とはならない。単に、機械が破損するだけだ。


 静寂の中、家の外で子供が遊ぶ声が微かに聞こえてくる。


 今や、街中で見られる人間は、十八才以下の子供のみである。仮想現実接続装置を使えるのは、十八歳の誕生日を過ぎてからと決まっている。

 なぜなら、人間の脳細胞は思春期まで安定した構造を保持していないからだ。生まれてから思春期を過ぎるまでは、ニューロン、グリア細胞などが結びつき、脳の安定した構造が完成するまで、人間の脳は毎日、いや、一分一秒ごとに変化している。


 それでは接続装置は脳の完璧な仮想現実でのリンクが維持できず、脳の地図ブレイン・マップが完成する十八歳を待たないと、使用できない規約になっている。


 十八歳以下の少年犯罪も激減した。犯罪に対する刑罰が、仮想現実接続装置の使用不許可であるから、それまでは大人しくしているに限ると、犯罪に手を染める少年少女がいなくなってしまったからだ。

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