目覚め
仮想現実から戻った田端洋子は、ふうっと溜息をついて、ヘルメットを脱いだ。驚きに、しばし痺れた状態で天井を見上げている。
これが仮想現実!
あんなものとは、想像もしなかった。現実より豪華で、しかも……リアルだった!
横を向くと、洋子の仮想現実接続装置が、窓から差し込む夕日に、仄かにピンクに輝いている。仮想空間と、現実の時刻は同期している。仮想空間の【蒸汽帝国】では夕方だったから、現実でもその時間だ。
寝椅子から立ち上がり、装置に近づく。
装置のモニターには、洋子の分身が映し出されている。
ほっそりとした身体つき、すらりと伸びた長い足。肩幅は広めで、胸は誇らしげに突き出している。顔は猫を思わせる大きな瞳が印象的で、柔らかなウエーブが掛かった髪が、背中に垂れていた。
愛おしげに、洋子はモニターの分身の映像を指で撫でる。これが仮想現実での自分……。
分身の名前はタバサ。
ふと洋子の視線が、部屋の片隅にある姿見に止まった。
どこをとっても丸々とした、子豚のような娘が、そこにはいた。ちんまりとした身体つき。腕も、足も、福々しく太っている。
スエット・シャツに、ホット・パンツという軽装で、剥きだしの手足にむっちりと肉がついていた。