表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
電脳歌劇の夕べ
34/198

忠告

 あっさりと言い放つ二郎に、タバサは呆れて、口をぽっかりと開いてしまう。二郎に顔を近づけ、囁く。


「本当なの?」


 二郎は頷いた。


「でも、どうして?」


 二郎の表情が、真面目なものになる。

「あの国立劇場が、どうやら【ロスト・ワールド】の接触点らしいんだ。

 あそこでは、今週、王宮主宰のミュージカルが演じられることは知っているだろう? 主演は、皇女エミリー。これは、どう考えても何かある。

 おれにとって【ロスト・ワールド】の接触点が開くことは好都合だが、もしそれが主演するエミリーに危害が加えられるような展開になると、甚だ面倒な事態になる。だから公演を中止するよう、忠告しに忍び込んだんだ」


 タバサは唇を舐めた。

「それで、どうなったの?」


 二郎は首を振る。

「駄目だった。エミリーは頑固だな。どうあっても、公演は開催するの一点張りだ。ついでに、おれは曲者ということになって、追われる身となった。まあ、しかたないが」


「これから先どうするの?」


 二郎は背を反らした。

「待つさ! ともかく、今週、主催されるミュージカルを、見に行こうと思う。君は、どうする?」

 タバサは躊躇った。何だか、ひどくヤバそうである。


 しかし……。


「行くわ、あたしだって!」

 決意の印に、腕を組み、二郎を睨みつけた。


「ふうん」と二郎は溜息をつく。


「よせ、と言っても無理だろうな。まあ、勝手にするさ。但し、何が起きても、責任は取らないぜ!」

 途端に弱気の虫が疼くのを、タバサは無理矢理どうにか堪えた。

「判ってるわよ……」

 何でもお見通しとでも言うつもりなのか、二郎の視線がからかうようなものになった。皮肉な笑みを片頬に貼り付け、二郎はタバサに忠告する。


「もしもの事態を考え、仮想現実に接続する前はたっぷり休養を摂り、栄養をつけておくことだな!」


 俄かな恐怖が、タバサの口調を弱々しいものにした。


「もしも、って何よ?」


 二郎の表情が真剣なものになった。

「〝ロスト〟だよ。決まってるだろう?」


 これには、タバサは二の句が継げなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ