強制切断
「!」と、声にならない叫びをあげ、客家二郎はそれまで身体を横たえていた仮想現実接続装置から跳ね起きた。
二郎は、ヘルメットを毟り取るように脱ぎ捨てると、自分の身体を見下ろした。
痩せこけた骨と皮のような身体つき。髪の毛はぼさぼさで、ふと上げた手の平に触れた顎には、無精髭が濃く浮いている。身に着けているのは、上半身にランニングと、パンツのみ。
木目の浮いたフローリングの床には、先ほど脱ぎ捨てたヘルメットが転がっている。ヘルメットの外側は、つるりと何もない。だが、内側には、びっしりと無数の極板が並んでいる。
ぷん、と異臭が漂う。二郎は眉を顰めた。失禁している。
さっと壁の時計を見上げた。時刻と、日時が表示されているタイプで、最後に見たときより三日が経過している。
三日!
二郎はよろよろと立ち上がった。下半身に便意が溜まっていた。かくん、と膝から力が抜ける。全身が怖ろしく疲労困憊していた。
「まさか……そんなことって……!」
呆然と呟く。怖ろしい想像が二郎の胸に湧き上がり、その顔に脂汗が浮かんでいた。
やっとの思いで歩き出す。目指すは、トイレだ。便器に座り込むと、どどーっと盛大に排出した。ざーっ、という水流の音を背中に、もう一度よろよろ仮想現実接続装置に向かう。
震える指先でヘルメットを取り上げ、頭に被る。そのまま装置の寝椅子に身体を横たえ、じっと待つ。
が、何分と経過しても、変化は全然なかった。装置の表示装置に、警告マークが点滅している。それを見て、二郎は腹立たしくヘルメットを再び脱ぎ捨てた。
判っていたことだ。強制切断が起きた後は、最低二十四時間は再接続は不可能である。