表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
蒸汽帝国
27/198

懇願

 エミリーの呟きに、首相は大きく頷いて見せた。


「成功なさいますとも! これまで皇女様が参加なされた公演は、悉く大成功でした。劇場に入れなかった不運な市民たちは、公演を記録した蒸汽映画を、今でも何度も見返しておりますわい」


 首相の言葉に、エミリーは悪戯っぽい笑顔を見せた。


「ねえ、タークさん。いつか……いいえ、今度という今度は、あなたにお願いしたことを実行して頂けませんの?」


 エミリーの口調に、何を悟ったのか、ターク首相はぎくりとした表情になった。

「と仰いますと?」

「あたくしとの共演ですわ! あなたが一緒に出演して貰えれば、とっても素敵だと思いますわ! ね、今度こそお願い。あなたにぴったりの役どころが御座いますのよ!」


 首相の眉が上がり、単眼鏡がぽとりと落ちた。それを無意識に片手で受け止め、首相はぽかんと口を開け、ぶるぶるっ、と顔を振る。頬の肉が、たぷたぷと波打った。


「御免蒙ります! 我輩、心臓が弱くて……あんな沢山の観客の前に出たら、一発で止まってしまいますわい!」


 エミリーは小走りに首相の側に近寄り、縋り付くような姿勢になった。


「ねえ、お願い……タークさん。うん、と仰って!」

「いいえ! 断固、お断りします! 絶対に、金輪際、天地が裂けようと、海が二つに割れようとも、不肖このターク、舞台に上がることだけは絶対に……」

「お願い……!」


 何度も拒否の言葉を口にするターク首相であったが、敗北は確定的であった。

 エミリーの懇願を敢然と退けるのは、そう簡単なことではなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ