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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
蒸汽帝国
26/198

首相

「皇女様、市民は、歓呼の声を上げておりましたな」


 慇懃な口調で、首相のタークはエミリー皇女に話しかけた。

 ビア樽のような身体つき、ピンクの丸い顔に、ふさふさとした白い髭を蓄え、片方の目に単眼鏡モノクルを掛けている。身長はエミリーの肩にも届かない短躯で、灰色のラシャ地のスーツに、ズボンの裾は短めのブーツにたくしこんでいる。


 首相の賛辞に、エミリーはちょっと顔を赤らめた。


 ここは、王宮の執務室である。窓からはシティの全貌が見渡せ、落ち着いた調度の家具には、太い蒸汽のパイプが接続されている。


 壁には、しゅうしゅうと微かな音を立てる蒸汽ランプが、柔らかな光源を放っていた。


 今はエミリーは簡単なワンピースに着替え、額のティアラも外している。こうしていると、エミリーが帝国を象徴する皇女とは思えず、どこかの快活そうな娘にしか思えない。


 エミリーは大きな窓ガラスに近寄り、シティを見下ろした。


 どこまでも続く甍の海に、無数の煙突がもくもくと煙を噴き上げている。ときおり、煙を上げていない煙突に、小さな人影が散見される。手には掃除道具を抱えている。煙突掃除夫なのだろう。

 こういった辛い仕事には、プレイヤーは絶対に関わらない。やっているのはNPCノン・プレイヤーである。NPCは単純な労働を請け負い、市民の生活を助けている。


 屋根の間から見える路地に、市民が思い思いに動き回る光景が、ここからでも見えている。


 それら大衆の景色を目にし、エミリーは呟いた。

「十周年記念の公演は、成功させたいわね。なんとしても!」

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