表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
電脳経済事情
23/198

鉄路

 個室に向かい合わせに座ると、すぐ汽車は走り出した。


 ぽおーっ、という汽笛の音がして、がったんと大きく揺れて汽車は走り出す。


 ごとん、ごとんという鉄路の響きが、すぐたたたん、たたたん……というリズミカルな震動に変わる。ようやく落ち着いたタバサは、物珍しげに窓の外を見やった。


 平坦な田園地帯が続き、ときおり絵葉書にありそうな、ちんまりとしたヨーロッパ風の農家が遠くに見えている。農家の庭先には、赤ら顔の農婦が、物干しに洗濯物を乾かしているのが見えた。


「あれも、ここの住民なの?」

 二郎は首を振った。

「いや、あれは繰り返しの背景なんだ。〝シティ〟に向かうプレイヤーたちに、ここが十九世紀であると思わせるための演出でね。実際、この列車からは、到着するまで外へ出ることは絶対できない」

「良くできているわね……」


 タバサは溜息をついた。二郎に視線を戻し、尋ねる。

「それで【蒸汽帝国】って、どんな〝世界〟なの? どうして最大、最古の〝世界〟になれたの?」

 二郎は手を上げた。

「やれやれ、質問攻めだな!」


 タバサはしゅん、となった。二郎は「仕方ない」とばかりに肩を竦め、説明を始めた。


「もともと【蒸汽帝国】は、三つの〝世界〟が合わさったものなんだ。一つは鉄道マニアが作った〝世界〟。一つはミュージカルの愛好者、もう一つが、十九世紀末の英国の生活に憧れる同好の士で作った〝世界〟でね。その三つの〝世界〟が一つに統合したから、最初から、かなりの規模だった。RPGロール・プレイング・ゲームの愛好者も参加したから、あそこでは魔法が使用されている」


「魔法!」


 最後の二郎の言葉に、タバサは飛びついた。

「魔法が使えるの! あたしでも?」


 二郎は、微かに首を振った。


「君の考える魔法とは、少し違うな。向こうでは魔法という名前は使っていない。単に蒸汽の驚異、という表現になっている」


 首を捻るタバサに、二郎は付け加えた。

「ともかく、呪文を使ってどうのこうの、といった類の魔法じゃないことは確かだ。ま、行けば判るさ」


 ちら、と窓の外に視線を向け、二郎は指先を上げた。


「ほーら、見えてきたぞ」

 遠景に【蒸汽帝国】が見えてくる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ