衣装
がしゅがしゅがしゅ……と逞しい蒸汽機関の音とともに、機関車が入ってきた。
緑色のペンキも鮮やかな、英国鉄道の蒸気機関車である。機関士は窓から首を突き出して、慎重に機関車を停止させた。
ベルを持った駅員が「からん、からん」とベルを鳴らしながら「〝シティ〟行き! 発車五分前!」と叫びながら歩いている。乗客は、ぞろぞろと乗車し始めた。
二郎に促され、タバサは客車のステップに足を掛けた。
「きゃっ!」と、その途端タバサは軽く悲鳴を上げる。
ステップに足を掛け、車内に入り込んだ瞬間、衣装が変化していた。
それまでのカジュアルな服装から、いきなり足下まで達するスカート、膨らんだ肩のクラシックなドレスに変化していたのである。
「心配ない。衣装が支給される、と言ったろう?」
声を掛ける二郎もまた、茶色のスーツに、山高帽、手にはステッキを握っていた。但し、二郎の被っている帽子には、相変わらず電脳盗賊ギルドの紋章が光っていた。
「ああ、驚いた! てっきり、着替えするんだとばっかり思っていた!」
今度は正直に、タバサは感想を述べる。
二人が乗り込むと、乗務員が近づき、切符を確認する。乗務員は二人を、個室に案内した。