21/198
ホーム
タバサは驚きの表情を浮かべた。
「それで今、あなたが支払った〝ハビタット〟は、どれくらいの価値があるの? あたし、返さなきゃ駄目かしら?」
二郎は天を仰いで高らかに笑い声を上げた。
タバサは恨めしげな目つきになって、顔を赤らめた。
「大丈夫! 一人に与えられる〝ハビタット〟は、一生ずーっと使っても、とうてい使い切れないほどだよ。それに、おれは、電脳盗賊ギルドに入っているから、気が向いたら盗賊稼業に戻って稼ぐこともできるしな」
二人の足が止まった。鉄骨で組みあがった大きな丸屋根の下に、長いホームが延びている。ホームには鉄路が真っ直ぐ、陽光の中に溶け込んでいた。鉄路の先には広々とした田園地帯が広がっているのが見える。
ホームには先客が何人か、待っていた。
皆、十九世紀末の服装で、二郎とタバサの二人は、その中でひどく場違いであった。気まずい表情のタバサに気付き、二郎は頷いて見せた。
「汽車の中に入れば、【蒸汽帝国】のドレス・コードに合った衣装が支給される。それも料金に含まれているんだ」