最終解決
新来の旅人は驚きのあまり、仰け反った。
「な、何でそんな途方もない規模を?」
益々、ぬーっと影二郎は顔を近づける。両目が怪しく、爛々と光っている。
「おれたちは宇宙を創造するんだ! 丸ごと一つだ! そのためには〝ハビタット〟は幾らでも必要だ。安心していい。あんたの〝ハビタット〟も、おれたちの宇宙の一部になるから、結局あんたは何も失うことはない。そうだろう? 新しい宇宙では、全ての〝ハビタット〟は参加する全員が共有することになるんだから」
「宇宙、丸ごと?」
旅人の声は驚きのあまり、掠れていた。
二郎は頷く。
「そう。今のところ、規模はやっと太陽系を収めるくらいには成長したが、最終的には銀河系全体を狙っている! 面白いぞ……おれたちの宇宙では、ワープ航法や、重力制御も当たり前にできる。百光年くらいの半径になったら、宇宙人を登場させようと思っている。SFの世界が、そのまんま再現されるんだ!」
二郎の言葉に、エルフの旅人はぼうっ、とした表情になっていた。
宇宙を丸ごと!
まったく、何て夢なんだ……。
ふと旅人はタバサと名乗った女性プレイヤーの外見が気になった。
むちむちとした肉付きのいい身体つき。スマートとは、お世辞にも言えない低い身長。仮想現実でプレイするなら、もっと格好いい分身を用意するのが普通じゃないのだろうか?
旅人の視線に気付いたのか、タバサはにっこりと笑みを浮かべ、話し掛けてきた。
「あたしのこの格好、変だと思っているんでしょう?」
「い、いいえ! そ、そんな!」
慌てて否定するが、完全にお見通しである。
「まあね。あたしも、最初はこんな格好じゃなくて、女の子なら誰でも夢見るファッション・モデルみたいな分身にしてた。でも、あたしはあたしよ。外見はどうでもいい、って気付いたの。だから、実際の外見をそのまま分身にして、プレイしているのよ。案外、そのほうが、仮想現実ではもてるのよ!」
得意そうにタバサはウインクをする。
「へえ……」と、旅人は感心する。
もしかしたら、そうなのかもしれない。
それにしても、宇宙一つを仮想現実に再現してしまうとは。本当にこの二人なら、実現するのかも。
「そ、それじゃ、あと一つだけ!」
指を一本ひょいっと立てる。タバサは首を傾げた。
「なあに?」
「どうして、僕が初心者だって判ったんです?」
これで『電脳ロスト・ワールド』は、お終いです。
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