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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
もう一つの旅立ち
195/198

迷い

 洋子は空を見上げ、上昇していく円盤を見詰めて口を開く。


「あんたがここを指定したから来たけど、あれは何なの?」

「やれやれ」と二郎は呟いた。

 ああ、確かに客家二郎である、と洋子は思った。口調がそっくりだ!


「レーザー・パルス推進の宇宙船だよ。ここは宇宙船の発射基地だ。今回、初めての実用試験があると聞きつけ、折角だから、ここを指定したんだ。どうだ、凄いだろう?」


「ふうん」と洋子は、気のない返事をする。

 正直、さっぱり判らない。どこが凄い、というのか?


「つまりなあ」と二郎は説明口調になった。


「レーザー・パルス推進とは、レーザーの焦点を集中することで熱を生み、それを推進力に変える宇宙ロケットなんだ。地上にエンジンと、燃料を置いて、本体を上昇させるから、搭載量が格段に違う。次世代の宇宙ロケットなんだよ」

「そうなの」


 ともかく、相槌を打つに限る。


 洋子は、二郎と現実世界で顔を合わせることを希望した。二郎は最初は躊躇したが、結局、洋子が押し切った。

 あれから、洋子は仮想現実に接続することを迷っていた。自分のしでかしたことを考えると、どえらい大騒ぎに巻き込まれ、仮想現実世界そのものを揺るがすことになったのである。怖れを感じて当然だった。迷いを断ち切るためには、二郎と直接、面と向かって会って、話をしたいと思ったのである。直に会って、二郎に尋ねたい疑問点があったのだ。


「ねえ、二郎……さん?」

「二郎で良いよ」


 二郎は苦笑した。洋子は思い切って話し始めた。


「あたし、一つ聞きたかったことがあるの」

「何を?」

「あんたが、どうして【パンドラ】なんてものを開発しようとしたか、ってこと!」


 二郎は黙り込み、ゆっくりと手摺に近づくと、上体を凭れかけさせた。空を見上げ、レーザー・パルス推進の宇宙ロケットを見上げる。

 洋子も釣られて見上げる。

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