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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
掟破りの解決
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【大中央駅】

 その時、全ての〝世界〟にいたプレイヤーは、不思議な衝撃を感じていた。不意の喪失感が、プレイヤーを襲う。


 何だ、何が起きた?


 きょろきょろと、プレイヤーたちはお互いの顔を見詰め合い、不安に立ち止まる。それは【大中央駅】にいたプレイヤーも同じである。【大中央駅】で目当ての〝世界〟に訪問しようとしていたプレイヤーたちは、全員その場で立ち竦んでいた。


「戻れないぞ! 現実に戻れない!」


 誰かが大声を上げる。

「戻れないとは、どういうことだ?」

「だから、現実世界へのアクセスができないって言ってるんだ! まるで、まるで……」

 大声を上げたプレイヤーは、的確な表現ができず、両手をさ迷わせる。隣にいたもう一人が呟いた。


「〝ロスト〟だ……」


 隣のプレイヤーが呟いた言葉に、その場にいた全員が、ぎょっとなった。ざわめきは、徐々に広がっていく。


〝ロスト〟!


 それは、全てのプレイヤーにとっての悪夢である。七十二時間の時間制限を過ぎると起きるとされている。現実世界では、プレイヤーの本体は仮想現実で過ごした記憶を失い、一方、仮想現実に取り残された分身は、そのまま現実世界に戻る伝手を失って、ひたすら仮想現実をさ迷う羽目に陥るのだ。


 ざわめきは悲鳴に変わり、悲鳴は叫びとなって【大中央駅】を覆った。


 わあわあとした喧騒が【大中央駅】全ての場所で起きていた。お互い両手を振り回し、精一杯の大声を張り上げ、両目を血走らせ、今にも掴みかからんばかりの勢いである。


 が、【大中央駅】では人々の衝突判定はゼロとなっているから、たとえ殴り合いの喧嘩が発生しても、拳はお互いの身体を突き抜けるだけだろう。


 だっ、と一人が遂に我慢できず、走り出した。行く当ては一切ない。唯その場に立ち止まっている恐怖に耐え切れないだけだ。しかし、一人が走り出したことにより、プレイヤーたちの間に恐怖が浸透し、全員が何の目的もなく闇雲に走り出す。


 何億人というプレイヤーが脛を飛ばし、恐怖に両目を飛び出さんばかりに見開き、口をぱかりと開いて全速力で走り回る。お互いの身体を空気のように突き抜け、一直線に、あるいは、うろうろと、その場で行きつ戻りつしながら動き回っていた。

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