表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
掟破りの解決
181/198

蒸汽軍

 ガントは上を見上げ、険しい表情を作った。


「あれは……シャドウではないか! どうやら戦っているようだが……?」

 ぐっと握り拳を固め、全身に怒りの震えが走る。

「糞! 何が何だかさっぱりだが、こうしてシャドウを目にして、何もできんとは!」


 ガントはその時、自分の持っている蒸汽銃に気付く。まだ持っていたのだ。


 ぐおおおん……!


 轟音に振り帰ると、なんと蒸汽百足から逞しい蒸汽が迸っている。無数の金属脚が、わさわさと蠢き、動き始めている。ガントの目が大きく見開かれ、その顔に喜色が浮かぶ。


「動いておる! すると?」

 無蓋車の操縦席で、ぼけっと前を見詰めたままの部下に命じる。

「おい! この車、動くのか?」

「はあ?」


 部下はポカンと、ガント元帥の顔を見上げた。首を捻り、アクセルを踏みつける。

 途端に、ぐわああん! とエンジンが咆哮し、操縦席の無数の計器に灯が点った。部下は「信じられません」と大声で喚きながら首を振る。


「動きます! 蒸汽が生き返りました!」


「そうか!」

 だん! とガントは車の外板を殴りつけた。ぐい、と首を捻り、蒸汽軍兵士たちを見やる。

「お前たち! 蒸汽の力が戻ったぞ! 武器はどうなんだ!」


 兵士たちは一斉に、がちゃ、がちゃと音を立て武器の点検に余念がない。間髪を入れず、部下たちを率いる中隊長、小隊長たちから返事が返ってくる。


「元帥閣下! ちゃんと作動します!」

「そうか……」


 元帥は、にこにこと笑顔になった。

「こうなれば……」


 突撃ーっ、と言いかける口元がぱくりと閉じる。

「なんだ、お主は?」


 ぐっと背筋を伸ばし、険悪な表情になって目の前の男に詰問する。


 もじゃもじゃの金髪、顔には満面の笑みを浮かべ、おかしなコートを身に纏っている。


 晴彦だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ