道連れ
そのとき、ようやく二郎は背後のタバサに注意を戻した。タバサは呆然とした表情で、見守っている。
「済まん……。つい、夢中になってしまった。さっきも言ったように、おれは【ロスト・ワールド】を探検するチャンスを探していた。こいつは──ティンカー(修繕屋)といって、おれの相棒だ。ティンカー。この女の子は、タバサだ」
ティンカーはつい、とタバサに近寄る。
「よろしく、タバサさん!」
「よ、よろしく……」
ちょっと仰け反ったような姿勢になって、タバサは答える。すっ、とティンカーは二郎の側に戻る。
「二郎さま。この人、初心者ですね?」
「まあ……」とタバサは、はっきりと気分を害した表情になる。
「まったく……、あたしを馬鹿にして! 二郎っ!」
呼び捨てにする。
「あんた、今からあたしを放っぽり出して、その【蒸汽帝国】とやらに出かけるつもりなの? ええ? あたしを指導するってのは、どうなったのよっ!」
二郎はほりほりと指先で鼻を掻いた。
「ああ……。そうだったな……。つまり、こんな次第で……要するに……」
ぐっとタバサは詰め寄った。
「あんた、あたしを連れて行きなさい!」
「えっ?」
二郎の口が、ぽかんと開く。
タバサは畳み込む。
「あたしも連れてって! あんた、道連れを探しているんでしょ? ちょうど良いじゃない。【ロスト・ワールド】に、あたしを連れて行きなさい! それが、あんたの義務よ。あたしに声を掛けた、あんたのね!」
二郎とティンカーは顔を見合わせた。ティンカーはくにゅっ、と身体を変形させ「?」の形になった。タバサは笑顔になった。
「【蒸汽帝国】って、面白そうな〝世界〟じゃない?」