決めポーズ
そうか! タバサは理解した。
これは、危機に陥ると、感覚が加速されるのかもしれない。
しかし、避けているだけでは、問題は解決しない。タバサには武器がない。
ゲルダの捻った腰のベルトに差されたヌンチャクが目に入る。タバサは仰向けのまま、腕を伸ばし、ヌンチャクに指を掛けた。じれったいほどに、のろのろと腕は動き、ゲルダの腰からヌンチャクを抜き取る。感覚は加速されているが、身体の動きは通常のままだ。
ごろごろと転がり、起き上がると、手にはゲルダのヌンチャクを持っている。ヌンチャクを奪われたことに気付き、ゲルダは怒りの表情になる。しかし、すぐニヤリと笑いかけた。
「手が早いね! しかし、そいつを振り回せるのかい? 自分の頭に当てるのが関の山ってものさ!」
ゲルダの言葉は真実だ。タバサは一度たりとも、こんな武器を扱ったことはない。だがタバサの心中に、なにか湧き上がってくる不思議な確信があった。
「試そうか?」
なぜか、自信たっぷりに言ってのける、自分に気付く。ヌンチャクを握りしめると、いきなりブンブンと音を立て振り回す。タバサの行動に、ゲルダは完全に呆気にとられていた。
タバサは、ヌンチャクをひゅんひゅんと目にも止まらぬ高速で身体の周りに回転させ、すぱっと脇の下に棒を収めた。
思わずゲルダに向けニヤリと笑い返すと、片手を上げ、挑発するように、くいくい、と手の平を閃かせてみる。どこかのカンフー映画で、こんなシーンがあったような……。
決まった!
タバサは自分のポーズに、うっとりとなっていた。