決闘
戦いというのに、シャドウと二郎の姿には何の変化もなかった。
一歩も動くことなく、じっとお互いの顔を穴の空くほど凝視しているだけである。
しかし、張り詰めた緊張感は、離れたところから見守っているタバサにも、痛いほど伝わってくる。目の前の二人は、精神の力で戦っているのだ。
意思と意思との戦い!
相手を捻じ伏せようと、あらん限りの精神力を振り絞り、一瞬一瞬が途方もない緊張感に満たされているのが、見てとれる。
そのうち、タバサの目にも、二人の戦いの影響が見てとれるようになった。
シャドウと二郎の立っている空間の中間点の付近に、時折、素早い閃光が走る。まるで逃げ水のような、あるいは陽炎のような光の揺らめき。閃光が弾ける瞬間、二郎が、シャドウが、共に顔を微かに歪め、苦痛に唇が引き結ばれる。
ばさばさばさ……と、シャドウの長い白髪が逆立った。ずり、ずり、ずりとシャドウの靴底が、床を滑っていく。
がく! と二郎が全身に巨大な重石を載せられたかのように、膝を折った。顔を真っ赤に染め、ぶるぶると震えながら横綱の土俵入りのごとく、力を撥ね退ける。
ちら、とタバサはゲルダ少佐を見た。少佐は修正ディスクを持っている! あれを奪うことができたら!
が、ゲルダは潜入する前に買い求めた武器を構え、油断なくタバサたちの動きに対応している。タバサたちはまるっきり、武器の持ち合わせがない手ぶらである。
ティンカーは、心配そうに空中をふらふらとさ迷っていた。タバサは指を挙げ、こっちへおいでと、手招きする。
ティンカーは救われたかのように、いそいそと近寄ってきた。
タバサは口を寄せて囁いた。