決意
二郎は「けけけっ!」と奇妙な笑い声を上げる。
「折れるものか! そいつは物質的なものじゃない。一種の力場そのものなんだ!」
憤然とシャドウは、ディスクをゲルダに投げた。ゲルダは取り落としそうになるのを、慌てて掴み上げる。シャドウはゲルダに、顔を向けずに、短く命令する。
「持っていろ! おれと二郎の決着がつくまで!」
シャドウの言葉に応じるように、二郎は一歩ささっと前へ歩き出す。背中を向けたまま、タバサたちに語りかける。
「皆も知っているように、おれとシャドウは、もともと同じプレイヤーだった。つまり、【ロスト・ワールド】の法則は、おれも好き勝手にいじることができる。今までは、潜入するため、封印していたが、今、対決のため、おれの全能力を解放させる! おれたちの戦いは〝世界〟を変化させて行う戦いだから、あんたらにはどうすることもできない。だから余計な行動は控えてもらおう」
二郎の言葉にタバサは猛烈な怒りを感じていた。
「それ、どういうこと? 邪魔だから引っ込んでいろ……ってことなの?」
二郎は横顔を見せた。二郎の見せる表情に、タバサは「はっ」となる。深い憂愁が二郎の表情には刻まれていた。
「そうだ。君らは邪魔になる」
二郎の口調は苦渋に満ちていた。タバサは何も言えなくなっていた。
シャドウは邪悪な笑みを浮かべた。
「話は済んだかね? それじゃあ、二郎。始めようか!」
二郎は頷くと、両手を軽く上げ身構える。
タバサは二人の戦いとは、どんなものなんだろう、と息を呑みこみ、じっと見詰める。