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分身
二郎は苦いものを飲み込むような顔つきになり、言葉を吐き捨てる。
「〝洗脳〟だな! シャドウが手を染めているとは聞いていたが、本当に〝洗脳〟された相手を見るのは、初めてだ」
二郎の顔には嫌悪感が溢れている。ゲルダは怒りの表情になった。
「そんな言い方しないで! あたしはシャドウ様によって、本来の自分というものを知ったのだから! シャドウ様に仕え、命令を実行するのが、あたしの喜びなのよ!」
ずい、とシャドウが一歩、前へ出る。
「それくらいにしておけ……。さあ、二郎。どうするね? 修正ディスクは、おれの手に渡ってしまったぞ!」
ニヤニヤと軽薄そうな顔つきになる。シャドウの表情を見て、タバサは二郎がやっぱりこんな笑顔になることを気付いた。
そうだ! シャドウは二郎の分身なんだ!
「こういう代物は……」
シャドウはエミリーの手を離すと、両手でディスクを掴んだ。ぐいっと指先で挟み、ディスクを捻り潰そうとする。
ぐぐぐぐっ! と、シャドウの全身に力が込められた。だが、両手で掴んだディスクには、何の変化も見られない。